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「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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狼少女

2005年/日本 監督/深川栄洋

「オーソドックスな力強さ」
狼少女_c0076382_02420.jpg


神社の境内にやってきた見世物小屋、というシチュエーションは確かに奇抜ですが、それ以外の子供たちの間で繰り広げられる人間模様は、いたってオーソドックスです。都会からやってきた少々おませで正義感の強い転校生の女の子、彼女のはつらつとした明るさに引かれる気弱な男子、貧乏ないじめられっ子の女子、彼女をいじめるガキ大将に嫌味な女子グループ。そうそう、昔はこんなんだった。誰もが幼き頃を思い出す、ごくごく普通の教室や放課後の風景。しかしながら、この映画が放つ力強さは何でしょう。

それは、昭和のノスタルジーなんて、感傷的な気持ちを引き出すことよりも、どっしりと、じっくりと子供たちの物語にフォーカスしているからなんでしょう。彼らの心の機微、揺れや迷いを丁寧に丁寧にすくい取ろうとしている。そんな作り手の真摯な姿勢が作品から感じられます。

私が気に入ったのはカメラです。父親と母親の間をゆらゆらと行ったり来たりして子供の不安な気持ちを表現したかと思うと、真正面から子供たちの顔をしっかり捉えて幼い心に芽生えた決意を表現したり。または、教室の机の下から斜めに構えたり、子供たちの周りをぐるぐると回ったり、スクリーン右から左へと橋の欄干を走る様をロングで撮ったり。とにかく、子供たちの生き生きとした様子を最大限に引き出しています。また、これらのカメラワークに応えるように、子供たちの演技がとても自然ですばらしいのです。

そして、去りゆく留美子をみんなで追いかけるラストシークエンスが堂々と物語を盛り上げます。これまた、物語としては実にオーソドックスな結末ですが、明が教室を飛び出してから、まるでカメラが子供たちの気持ちを乗せているかのように、カットが切り替わる度に切なさが二重にも三重にも膨れあがっていくのです。ランドセルが落ちてくる意外性と映像としての動きの付け方なんて、素直に「やられた!」と思いました。何とも、清々しい。心の洗濯をさせてもらいました。
by galarina | 2008-10-04 15:30 | 映画(あ行)