「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ヴァイブレータ

2003年/日本 監督/廣木隆一 

「王子様がトラックに乗ってやってきた」
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痛い。痛すぎる。グサッと胸を刺された上にさらにナイフをねじ曲げられたような痛さが走る。しかし、見終わった後のこの爽快感は何だ。主人公は「もうひとりの自分の声」に悩まされている、という設定だが、これは何も精神的な病気ということでも何でもないと私は思う。女なら誰だってあるさ。自分で自分にツッコミ入れることが。とりわけ30過ぎればね。アタシ、このままでいいんかい?流されてないか?将来どうすんだ?結婚は?出産は?いつまでも若くないぞ。毎日、毎日そんな声と闘ってる。

正直、この映画は女のロマンの具現化だと思う。アルコール依存、食べ吐きを繰り返す31歳のルポライターが、ある日何かの啓示を受けたかのようにふらふらとひとりのトラック乗りのにいちゃんと一夜を過ごし、そのまま道連れにしてもらう。それは女の癒しの旅。こんなトラッカーおらんぞ、とツッコミを入れながら、見ている私も癒しの旅の同乗者に。もしかしたら、全てはこの女の妄想かも、と思ってしまうほどの夢物語。実際、冒頭とラストが同じコンビニのシーンであるが故にあながちそう考えるのも間違っていないように思える。

寺島しのぶがいいのはもちろんで、彼女の限りない「普通さ」が全ての女性観客の気持ちを主人公に同化させる。しかし、大森南朋だって最高。中卒で、ヤクザの世界にも片足つっこんでて、委託でトラック運転しているにいちゃんで、こんなに優しくて、おしゃべりがうまくて、人の話もちゃんと聞いてくれる奴なんか絶対いない!と思うんだけど、そこで引いてしまうどころか、時間が経つに連れてこの男にどんどん前のめりな私。それもこれも、大森南朋の巧さにつきると思う。ともかく、さっき目が合っただけの女が助手席に乗りこんできて、開口一番、「ようこそ」。もうこれで私はクラクラしたよ。

東京ー新潟往復間の風景も美しいし、音楽のセンスもとてもいい。運転中にトラッカーが話してくれるどうでも話も、まさにどうでもいいんだけど、見ていて飽きないし、いいシーンになってる。ほんと、全編に渡って無駄がない。

それにしても寺島しのぶの脱ぎっぷりなんて話題が先行することが、非常にもったいない。この映画はそれ以上。100%とは言わないけど、映画って「生」や「死」を扱うものでしょ。「生」を描くには「性」は不可欠なもの。そこだけ取り上げてグダグタ言うんじゃない!と言いたくなる。ただ、「こんな女はかなわねえ」「30女の妄想話に付き合わされた」という意見が、もしかしたら男性諸君からは出るのかも。なんかね、それもある意味納得。だって、それくらいせっぱ詰まってるからね。私も知り合いの男に見てもらって、ぜひこの映画の感想を聞いてみたい、と思った。これは「女の性」をそいつがどう捉えているのか、というのを客観的に判断できるベストな映画なのかも知れない。

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by galarina | 2006-07-08 20:07 | 映画(あ行)

ジョゼと虎と魚たち

2003年/日本 監督/犬童一心 
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邦画の純粋なラブストーリーで、これは!という作品に出会えることはあまりない。大体旬の若手女優を起用して、センチメンタルな音楽とありきたりなストーリーで泣かせようという作り手の魂胆が丸見えで、見終わったら「アホか」という言葉しか出てこない。だけど、この映画は違う。正直妻夫木くんは、この映画を見るまではただの人気俳優の1人だと思ってたけど、この映画を見てからはれっきとした映画俳優だな、と認識を改めた。それぐらいいい。

妻夫木くん演じている恒夫は、いわゆるどこにでもいそうな軽薄な大学生だ。そんな彼がジョゼというへんてこな女に出会って、自分自身も変わってゆく。でも、結局最後の最後に軽薄な大学生の根っこの部分は変わることがなかった。結末は悲しい。だけど、私にはこの結末があまりにリアルに感じられて怖いくらいだった。ジョゼの部屋を出て行った恒夫が、そのすぐ後で女友達と待ち合わせをしていて、しかもその女の目の前で別れのつらさに泣いてしまう。ほんとにどうしようもない男。だけど、なんか許せてしまう。そこは妻夫木くんの演技力によるところが大きいと思う。カンチは許せなかったけど、恒夫は許せるぞ。

そして、ジョゼを演じる池脇千鶴。もう、強烈なキャラクターを自分のものにしてる。この子、すんごい口悪いんだな。初めて出会った恒夫に「アンタ」呼ばわりやし、「アホか」とか「どっかいけ」とか大阪弁で連発。普通、こんな子好きにならんやろう、と思うのだが、なんとも魅力的。まっ、こんなにぶっきらぼうな女が料理を作らせるとうまい。そんなギャップがいいんだな。足が不自由ということで台所の椅子から突然ドサッと落ちるシーンは、毎回ドキドキする。ジョゼの危うさとかぶっきらぼうさを象徴したシーン。

好きになればなるほど、相手のために何かしたいと思う。でも、それが行き過ぎると空回りしたり、相手はそんなこと望んでなかったりして、臆病になったりする。でも恒夫は、ジョゼの笑顔が見たくて、がんばる。他人から見れば、同情や偽善と言われかねない行動も、恒夫にとっては純粋な愛情から出た行為。その末に行き着いた結末だからこそ、二人は受け入れられる。恒夫の愛という贈り物をもらったからこそ、ジョゼはようやく外界に飛び出す勇気を得たのだ。しかしまた、あんなに人を愛することはもうないことも、ジョゼはわかっている。いつも通り鮭を焼く彼女の表情は、晴れやかで、そして、切ない。

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by galarina | 2006-07-08 19:51 | 映画(さ行)