「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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砦なき者

2004年/日本 監督/鶴橋康夫 脚本/野沢尚

「テレビを信じてはいけない」
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破線のマリス」に引き続き、テレビ局の功罪をよりセンセーショナルに描いた傑作。テレビドラマだけど、DVDも出ているので多くの人にぜひ見て欲しい。

「破線のマリス」よりもメディア批判はさらにパワーアップしてる。実際公式HPの原作者よりというページで野沢氏自身が、『この「砦なき者」のテーマは、テレビを信じてはいけないということ』、と言い切っている。テレビドラマというジャンルで曲がりなりにもギャラをもらっている人が、ここまで痛烈な批判を行う勇気はあっぱれだと思う。

そして、恋人の自殺はメディアの報道にあると訴えて一躍カリスマになっていく妻夫木聡が非常にいい。実は、私はオンエア当時、この悪役を妻夫木君がやると聞いて、少々不安だった。でも、蓋を開けてみればなんの、なんの。影のある青年を見事に演じてる。2003年の「ジョセと虎と魚たち」、2004年の「砦なき者」で妻夫木聡は、確実に演技派への階段を上ったと思う。

妻夫木聡演じる八尋樹一郎は、報道の被害者という世間の同情をうまく利用してカリスマになっていく。これは、メディアそのものが「叩かれることに慣れていない」ことをうまく利用しているわけだ。つまり、被害者だと訴えられたことで萎縮してしまい、彼に対してまるでお手上げ状態。お祭り騒ぎは上手だが、批判されるとめっぽう弱いメディアの体質。しかし、メディアをそのように甘やかしているのも私たち自身なのだ。メディアに映るものを本質と受け取ってしまう、大衆心理の愚かさ。我々、日本人は実に「批判精神」が欠けている。

メディアに復讐したい男、八尋と八尋によって人気キャスターの座を追われた長坂(役所広司)が対決するラストシーンもすばらしい。揺れ動く人間心理を巧みに描く野沢尚氏の脚本が、一級品のドラマを創り出す。最初から最後まで続く緊張感は見応え充分。見終わった後、確実にメディアなんて信用できない、という気持ちになるだろう。そして、そんな批判精神でメディアを捉え続けた野沢尚のドラマがもう見られない、という事実もまた、深く胸に迫る。
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by galarina | 2007-03-04 14:07 | TVドラマ

69 sixty nine

2004年/日本 監督/李相日
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「パッチギ」
の時に、主人公の康介がなぜそれほどまでに「イムジン河」に入れ込むのか伝わらなかった、と書いた。が、しかしこれは少々違うのかも知れない。それはその世代なら当然わかってしかるべき共通認識かも知れないからだ。だから、彼がこの曲に入れ込んだ理由などいちいち描写することでもなかったのかも知れない。「イムジン河」と聞いただけで目頭がじんと熱くなる世代の方々なら、何を言ってるんだオマエ的な感想だったんだろうな…。

さて、この「69」は、作家村上龍の半自伝的小説が原作。全共闘時代、そしてウッドストック。世代としてかすりもしない若い人たちが観たら、ちっとも面白くないんだろうか。いや、そんなことはない。それは「パッチギ」と同じだ。体制への反抗心、そしてどこかにぶつけなければ処理できない若者たちのエネルギー。だが、今作は基本的にそれらの行動が「モテたい」という、下心にのみ集約されているのが微笑ましい。時代とか、そういうかったるいことは抜きにして、モテたい故のハチャメチャぶりをただ笑い飛ばせばいいのだ。

ただ、悲しいかな、私のような村上龍好きならば、彼がこの後上京してフーテンのような生活を過ごし、福生に移り住んだ後はアメリカ兵たちと生死をさまようほどドラッグに溺れたという事実を知っているだけにそれなりの感慨もあろうけど、そうではない人に取ってはドンチャン騒ぎを見せられただけ、という感想になるのもうなずける。

でも、学校のバリケード封鎖、映画制作、フェスティバルの開催と彼らがエネルギー全開で突っ走る様子は十分に楽しめる。学校中に落書きしたり、校長室で大便したり、とまあやりたい放題。どっぷりの佐世保弁も面白い。叩かれても叩かれても起き上がる主人公ケンを演じるのは妻夫木聡。親友アダマが安藤政信。どう観ても60年代の学生には見えないけど、それがかえって当時を知らない人たちには、身近に感じられて良かったんじゃないかな。

青春の1ページを描いただけには違いないけど、こんなにディープな時代だってあったんだって思えば結構楽しめる。全共闘なんて言うと、暗いし、小難しくなるけど、こんなバカバカしい描き方でこの時代を振り返るのも、それはそれでアリなんじゃないのか、と私は思う。美術教師であるケンの父親を演じるのが柴田恭兵。キャスティングを聞いた時は合わないと思ったけど、これが案外良かった。


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by galarina | 2006-10-09 00:47 | 映画(さ行)

春の雪

2005年/日本 監督/行定勲
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清顕は、好きな女に対していじわるしかできず、いざ他の人のものになるとなったら、だだっ子のようにじたばたしているガキみたいな男、ではない。これは、三島だよ。清顕って奴は、ナルシストで、サディストで、破滅主義者。アイツはこうなること、わかっててやってたのさ。ああ、俺はもう袋小路に追い込まれたよ~ってのを楽しんでるの。だけど、そこんところ、観客に伝えるには、あまりにも映画の作りがミーハーだった。もう、これは、主演が妻夫木聡と竹内結子という人気者で、バックにフジテレビが付いていて、主題歌が宇多田ヒカルって段階で、ほとんど期待できないのは同然。なんで、三島なんてものが企画に上がったのか理解に苦しむ。純愛映画を撮ろうてことになって、ちょっと毛色の変わったものをやろう、みたいなノリだったんじゃないの?三島作品を映画にするなんて、相当覚悟がいるはず。

私は、妻夫木聡がとても好きなので、がんばっていたとは思う。でも、役者として「よくがんばったね」と思われるのは、決していいことじゃないんだ。がんばってるのが見える、というのは役になりきれてないってことだからさ。いちばん良かったのは、大楠道代。さすがの貫禄でした。ツィゴイネルワイゼン思いだしちゃった。2時間半という長尺でも見られたのは、撮影を担当したリー・ピンビンの映像の美しさ。ちょっとステレオタイプな日本の風景が気になるところもあったのは確かだけど。

清顕という男が持っている不可解性が表現しきれていないこと、そして大正という時代が放つものを観客が感受できないこと。これは、大いにひっかかりました。チェン・カイコーが三島のこの原作を撮りたいと言っていた、なんて話を聞くと、「ああ、そっちが見たかったな」とすごく思っちゃう。果たして行定監督は、今後もメジャー資本で映画を撮り続けるんだろうか。
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by galarina | 2006-07-23 18:06 | 映画(は行)

ジョゼと虎と魚たち

2003年/日本 監督/犬童一心 
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邦画の純粋なラブストーリーで、これは!という作品に出会えることはあまりない。大体旬の若手女優を起用して、センチメンタルな音楽とありきたりなストーリーで泣かせようという作り手の魂胆が丸見えで、見終わったら「アホか」という言葉しか出てこない。だけど、この映画は違う。正直妻夫木くんは、この映画を見るまではただの人気俳優の1人だと思ってたけど、この映画を見てからはれっきとした映画俳優だな、と認識を改めた。それぐらいいい。

妻夫木くん演じている恒夫は、いわゆるどこにでもいそうな軽薄な大学生だ。そんな彼がジョゼというへんてこな女に出会って、自分自身も変わってゆく。でも、結局最後の最後に軽薄な大学生の根っこの部分は変わることがなかった。結末は悲しい。だけど、私にはこの結末があまりにリアルに感じられて怖いくらいだった。ジョゼの部屋を出て行った恒夫が、そのすぐ後で女友達と待ち合わせをしていて、しかもその女の目の前で別れのつらさに泣いてしまう。ほんとにどうしようもない男。だけど、なんか許せてしまう。そこは妻夫木くんの演技力によるところが大きいと思う。カンチは許せなかったけど、恒夫は許せるぞ。

そして、ジョゼを演じる池脇千鶴。もう、強烈なキャラクターを自分のものにしてる。この子、すんごい口悪いんだな。初めて出会った恒夫に「アンタ」呼ばわりやし、「アホか」とか「どっかいけ」とか大阪弁で連発。普通、こんな子好きにならんやろう、と思うのだが、なんとも魅力的。まっ、こんなにぶっきらぼうな女が料理を作らせるとうまい。そんなギャップがいいんだな。足が不自由ということで台所の椅子から突然ドサッと落ちるシーンは、毎回ドキドキする。ジョゼの危うさとかぶっきらぼうさを象徴したシーン。

好きになればなるほど、相手のために何かしたいと思う。でも、それが行き過ぎると空回りしたり、相手はそんなこと望んでなかったりして、臆病になったりする。でも恒夫は、ジョゼの笑顔が見たくて、がんばる。他人から見れば、同情や偽善と言われかねない行動も、恒夫にとっては純粋な愛情から出た行為。その末に行き着いた結末だからこそ、二人は受け入れられる。恒夫の愛という贈り物をもらったからこそ、ジョゼはようやく外界に飛び出す勇気を得たのだ。しかしまた、あんなに人を愛することはもうないことも、ジョゼはわかっている。いつも通り鮭を焼く彼女の表情は、晴れやかで、そして、切ない。

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by galarina | 2006-07-08 19:51 | 映画(さ行)