「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ハンコック

2008年/アメリカ 監督/ピーター・バーグ

「鮮やかな転調」

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今流行りの悩めるヒーローものから、どれほど個性的なものに仕上がっているのかをポイントに観賞。何の予備知識もなく見た方が面白いという周囲の声に従いましたが、これネタバレしたら、面白いこと何にもなくなりますやん!と、いうわけでとっても感想の書きづらい作品です。

まさしく、ネタバレできない後半への物語の転調ぶりが実に鮮やかです。これが、この作品の一番いいところですね。ええっ?と思っている間にあれよあれよと、全く違う物語が始まる。強大なパワーゆえに嫌われ者になっているハンコックですが、彼の投げやりな言動は、記憶喪失の天涯孤独な身の上から来ています。その彼の孤独感が、この転調を境に浮き彫りになっていきます。

それでもかなり荒唐無稽で、説明不足な感もあるのは事実。そこは敢えて語らず90何分にまとめあげることを優先したのかなという気がします。コンパクトに仕上げることを、優先した、というのは、それはそれでアリな感じもします。説明不足によるモヤモヤ感もハンコック演じるウィル・スミスの孤独感がきちんと伝えられていたので、あまり気にはなりませんでしたね。むしろ、彼の取った選択にちょっと胸を締め付けられたりして、うるっときそうになりました。

ただ、カメラがぐらぐらと揺れるのが終始気になりました。冒頭のベンチのシーンは、ハンコックがアル中だから、彼の目線を描写しているんだろうと理解できます。それでも、大きなスクリーンに映るアップの顔がぐらぐらと揺れているというのは、気分的に耐え難いのです。映像関係のお仕事の方にお尋ねしたところ、これはステディカムではないかとのこと。やはり、アクションシーンでなく、人を映す時はカメラは固定して欲しいと思う、旧型人間なのであります。

さてさて、明かされた秘密の件ですが、これは突っ込めば突っ込むほど、宗教的な世界観が絡んできそうです。本作では、突っ込めるほど明らかになっていないので、何とも言いようがありませんが、この隠し具合はどうやら「ハンコック2」を作ろうという製作者側の意図が見えます。そうなった時に、しっかりと世界観が構築できるのかというのがポイントになると思います。私は、アダムとイブの物語なのかな、と思っているのですが。あっ、ネタバレ?
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# by galarina | 2008-09-08 21:10 | 映画(は行)

ワイルド・アニマル

1997年/韓国 監督/キム・ギドク

「冷凍魚の怪」
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画家を目指してパリに来たのに、今は他人の絵を売ることで生計を立てている男チェン。「鰐」に引き続き、監督お得意のサイテー男がまたまた主人公です。画家を目指しているのに、友の絵を売る。これは、裏切りは裏切りでも同胞への裏切り。同じ盗人でも店の物を盗むよりも、さらに悪い。いちばん卑劣な行為ではないでしょうか。

「鰐」は、身投げした人の金品を盗み、その上警察に死体の居場所を教えることで情報提供料をもらおうとする男、ヨンペ。その後の「悪い男」は、好きな女をスリとして捕まえさせ、あげくの果てに売春婦に仕立て上げる男、ハンギ。どいつこもこいつも、悪いことの倍掛けみたいな主人公ばかりです。この常識的な人ならば誰もが感じる彼らへの嫌悪感がふとしたきっかけで、純粋な愛、または慈しみの情を我々に感じさせるのがギドクの才能です。しかし、本作はハンガリー人女性への愛情と、脱北兵ホンサンとの友情の板挟みに苦しむため、お得意のピュアなるものを突き詰めるプロセスが分散されてしまったように思います。これまでギドク作品を見てきた人が初期を振り返るということにおいては面白さも発見できるでしょうが、これだけで楽しめるかと言うと正直難しいです。

でも、思わずギョッっとなるショットは、多々あって、その辺が初期作を見る楽しさと言えます。DV男が女を痛めつけるのが、なぜか凍った魚。冷凍庫を開けると、ずらっと並んでます。このショットが強烈で、「なんで、魚?」が頭から離れません。そして、最低男チェンが住み家としているのが、アトリエ兼用のかわいらしい白い船。このギャップ感がスゴイ。

こういう奇天烈なアイテムって、「絶対の愛」の唇マスクなんかもそう。だから、少しずつヘンなものを美しく見せるテクニックをギドクは努力して身につけていったんだろうなあ、と思います。ちょっと失礼な言い方かも知れないけど、ドニ・ラヴァンの存在自体もすごく奇抜でしょ。それらの奇抜なアイテムが浮いてしまっていて、全体を見渡すとギクシャクした印象になってしまったかな。でも、苦労してリシャール・ボーランジェとドニ・ラヴァンを口説き落としたってところは、ギドクの心意気を感じます。
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# by galarina | 2008-09-07 17:31 | 映画(わ行)

転々

2007年/日本 監督/三木聡

「初心者でも十分楽しめるほのぼの三木ワールド」

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オダジョーは好きだけど、もれ無く「時効警察」を見ているワケじゃない。そんな私にとっては、この作品「内輪ネタが多くてノリきれないんじゃないか」という不安の方が大きかったんだけど、意外や意外、なかなか楽しい作品なのでありました。楽しくて、そして、心温まる佳作。

この作品の良いところは2つあって、ひとつはストレートにお散歩の楽しさを感じさせてくれること。旅行に行くとガイドブック片手にがんばってあちこち歩くくせに、なじみ深い街になるとさっぱり、なんてことないですか。本作は、特に東京に住んでいる方にはなおさら響く物があるんだろうなあと思う。そして、共に歩くことによって、心がほぐれていく。捨て子だからと卑屈だった文哉の心がほぐれ、下町の懐かしい風景を目にして、私たち観客の心もほぐれる。

もう一つは、三木監督の十八番である小ネタがしっくりと作品に馴染んでいること。本作にちりばめられた小ネタは、知ってる人だけ、わかる人だけ、笑ってくれりゃいいんです、って感じがなくて、どれも、これも、愛を感じるなあ。「岸辺一徳を見るといいことがある」ってくだりは、三木監督は岸辺一徳が好きなんだろうなあと思うし、「街の時計屋はどうやって暮らしてるのか」のくだりも、こういう昔ながらの商店街への愛を感じるのよね。で、どれもこれも、くくっと肩をふるわせるような笑いに満ちていて、すごく気持ちがほんわかしてくる。

岩松了、ふせえり、松重豊。この3人のパートが、見る人によっては余計なのかな。これで文哉と福原の物語が、ぶつっと途切れる感覚になっちゃう人がいるのも理解できる。私は意外とそんなことなくて、軸となるストーリーの箸休めのようなものであり、福原さんの奥さんになかなかコンタクトを取ってくれないから真相を先延ばしにする役目を果たしているようでもあり。そして、何よりこの3人のくだらない会話に象徴される「日常の些細なコミュニケーションが心を癒してくれる」って言う三木監督のメッセージがすごくよく伝わるのね。まあ、この3人の織りなすトークに「あ・うん」の呼吸の気持ちよさみたいなのがあります。

疑似家族を作り出す後半部もいいです。文哉はきっとこれまで「我が家」と呼べる場所がなかったんだよね。今まで出会ったことのない感情に見舞われた文哉のとまどいが切なかった。で、福原は「カッときてつい殴ったら死んじゃった」なんて、言ってるけど、きっとあれは違うんじゃないかしら。だって、奥さんきれいにお布団の中で寝てたもの。不治の病か何かで福原が安楽死させてあげたんじゃないかな、それで思い出の場所を巡っていたんじゃないのかな、なんて、私は思ったりしたのだけど。まあ、そんな余韻に浸れるのも、文哉が「自首は止めてくれ」なんて、懇願したりしないまま、スッっと終わっちゃうからなのよね。すごく粋なエンディングで、これもまた良いのです。
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# by galarina | 2008-09-06 17:41 | 映画(た行)

20世紀少年 第一章

2008年/日本 監督/堤幸彦
<TOHOシネマズ梅田にて観賞>

「夏休みの子供向け怪獣映画みたいだ」
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ファンのひいき目ではなく、正直これ「トヨエツが出てなかったらどうなっていたんだろう!?」という印象です。終盤彼が出てきてから、一気にスクリーンが締まります。見た目も物語も。あのですね、堤幸彦監督の作品をこれまで見ていないわけではありません。しかし、演出の稚拙さが目立って絶句。メリハリがないし、子役を魅力的に見せていないし、盛り上げどころがきちんと盛り上がらないし。後半は子供向けのガメラ映画みたいです。確かに大阪万博などのノスタルジーな感じは、惹かれるんですけども。ラストのロボットは、岡本太郎財団の許可を取ったのか!?

話があまりにも荒唐無稽で、これは原作によるところなんでしょうが、これを映画にするとなった時にどういうものに仕上げたかったのか、完成図を描けないまま、取りかかってしまった。そんな感じに見えます。何と言っても役者陣の使い方が中途半端です。もちろん、第一章であるから紹介のみに止まってしまう部分はあるでしょうが、唐沢寿明以外の、香川照之やら佐々木蔵之介やら、ほとんど演技させてもらっていません。生瀬も小日向さんも宮迫も、めっちゃちょい役。何と、もったいない!もったいないし、この豪華メンバーを魅力的に見せられていないってのは、監督の力不足としか思えません。ユキジなんてキャラクターも、もっともっとはじけた女の子にできなかったですかね。

こんなことメディアで大声で言えないんでしょうけど、主演の唐沢寿明の魅力不足も大きいです。ロック魂のあるリーダーとは、とても見えない。ギターをかついでも、全然様になっていません。トヨエツがいかにスクリーンで映えるかをしみじみ実感&再確認しました。 そして、トヨエツ以外にその存在感でびしっとスクリーンを引き締める俳優がひとり出てきます。誰だと思います?洞口依子です。夕暮れのアパートにぽつんと座る彼女が出てきたカットで突然黒沢映画になりました。

T-REXのテーマソングね、私大好きなんですよ。グラムロックは好きなんです。このイントロのジャカジャーン♪と言うくだりが、全然映画のカタルシスとなってないんですね。これが致命的です。 そして、このシリーズに60億円の投資と聞いて、これまた絶句。
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# by galarina | 2008-09-05 16:01 | 映画(な行)

ギプス

2000年/日本 監督/塩田明彦

「関係性の映画」
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フェチ道全開。ギプス、松葉杖、眼帯、包帯、車椅子。病院プレイが好きな人にはたまらないアイテムがそろっています。終盤はクローネンバーグの「クラッシュ」にも似た世界へ突入。義足のジッパーとぎりぎりと締め上げるようなスタイリッシュな映像美はないものの、物語がどう進むのかまるで先の読めない不安感は、こちらが上かも知れません。

「私がギプスをはめると何かが起こる」という環。そのぎこちない歩みに、とめどなく惹かれる人がいる。もちろん、性的な意味合いで。こういうテーマだけでも十分に面白いです。松葉杖の女の後をまるで魔物に取り憑かれたようにフラフラを追う人々がいるということ。その深層心理は一体何か。実に興味深いですね。単にギプスの中を覗いてみたい脚フェチ心理だけではないように思います。このテーマで2000文字くらいは書けそうです。

さて、作品の見栄えを文章化すると、極めてキワモノムードの高い作品に思われがちですが、本作の真髄は「和子」と「環」という2人の女性の関係性を描くことに終始しているということでしょう。前作「月光の囁き」のSM的恋愛関係はやや特殊でしたが、本作ではそれを女同士の力関係に置き換えています。環に触発された和子はバイト先で横暴に振る舞ってみたり、松葉杖をついて環の気分を味わってみたり。相手より優位に立ちたい、相手から必要とされると嬉しい、相手に裏切られると憎らしい…etc。徹底的に、1対1の人間関係が織りなす心理模様が描かれていくのです。そこには、友情を築きたいとか、愛しあいたい、という目的は一切見えてきません。だから、先が全く読めないのです。けだるいギターのBGMもツイン・ピークスのよう。妖しげな塩田ワールドにどっぷり引き込まれました。
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# by galarina | 2008-09-04 13:15 | 映画(か行)

サン・ジャックへの道

2005年/フランス 監督/コリーヌ・セロー

「旅、ときどき夢想」
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信仰心のない仲の悪い3人兄弟が母の遺産目当てに巡礼の旅に参加する。こう聞いただけで、全ての方が、ケンカしながら仲直りする話だろ?と思われるに違いありません。そして、まさしくその通りなのです。激しくネタバレですね。でも、言っちゃっても構わないんです。だって、それでも、とても面白いですから。これを見た数日前に「口裂け女」を見てかなりヘコんでいましたので、すっかり心が清められたような気分になりました(笑)。

予測できる展開ながらも面白いのは、自分も巡礼路のツアー参加者になったような気分にさせられるからです。ヨーロッパの田舎町の美しい風景に目を奪われ、宿が決まらないいざこざにハラハラし、帰りたがるワガママな人にうんざりし。そして、旅が進むに連れ、少しずつ打ち解けあい、距離が近づき、互いの不安を癒し合う。「明日へのチケット」もそうですが、旅って、なんて素敵なんだろうと思わずにはいられません。

そして、本作をより豊かにしているのは、夢のシーン。旅に参加する人々のトラウマを顕在化させた美しい幻覚または夢想と言った方が良いでしょうか。フランス語のできないアラブの少年が巨大なアルファベットの「A」と言う文字に押しつぶされるユーモアにあふれたものから、美しく幻想的なものまで。この様々な夢想のシークエンスが、本作を単純なロードムービーに止まらない、個性的な逸品にしています。思い描く人生の道からちょっぴり外れた3人兄弟の行く末は、どうなるのでしょうか?その結末を想像しながら共に旅すれば、人生捨てたもんじゃないって、心がほんわり温かくなること受け合いです。
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# by galarina | 2008-09-03 16:38 | 映画(さ行)
2008年/日本 監督/李闘士男
<TOHOシネマズ梅田にて観賞>

「クラウザーさん、最高っす!」
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いやあ、すごかった。面白かった。
松山ケンイチ、サイコー!。
彼のカメレオンぶりにとにかく降参しましたです。

最近流行の仮の姿に悩むヒーローのような話、なんて言う映画評を読んだのですけど、全然違うでしょう。これ、「仕事論」でしょ?と私はひどく納得したのですよ。自分のやりたい事じゃない。でも自分にしかできないことなら、やるべきだよ!っていうね。なんか、私を含めてこういう状況の人「この仕事は本当にしたかった仕事じゃない…」なんて、悩んでる人多いと思うんです。そんな人たちに勇気を与える映画じゃないでしょうか。

脚本としては、前半部ちょっと根岸くんの語りが多くて、くどいんです。また、やる気をなくして田舎に戻る、なんてのもある程度想像できちゃいます。それでも、ラストの対決に向けて、盛り上がる、盛り上がる。現在継続中の漫画をうまく2時間にまとめたなと思います。また、きちんと「絵になるカット」が多いんですね。それが、たかがお馬鹿映画とはあなどれないところ。クラウザーさんが後輩とトイレでリズムを刻むシーンとか、ヒールの高いロンドンブーツ履いて激走するシーンとか。やってることはマヌケですけど、しっかり構図を捉えたきれいなショットを作っています。それにしても、あのブーツ履いて全力疾走はきつかっただろうなあ。

「音楽映画」としてきちんと成立しているところも、とても評価できます。おしゃれポップス系もデスメタル系も楽曲がレベル高いですね、カジヒデキだから当然ですが。ジーン・シモンズは、良く出てくれたなあ。正直ね、わたしゃヘビメタ嫌いなんですよ、暑苦しくて。でも、ラストのライブは興奮しました。つまり、イロモノ系だからと逃げたり、流したりせずに、非常にしっかりとまじめに作り込んでいるところがとても良いのです。

そして、松山ケンイチくん。もちろん、「デスノ」で彼のカメレオンぶりは分かっていたつもりですが、本当に参りました。クラウザーさんの時の歌い方なんて、どれくらい練習したんですかねえ。だんだん、クラウザーさんがかっこよく見えてきたからビックリ!この演技を見せられて、私の中では加瀬亮くんを超えてしまったかも。クラウザーさんのシーンではカメラが回る前に観客を入れた状態でアドリブで毒々しいセリフをかましてたって言うじゃないですか。いやあ、本当に凄い。根岸くんもクラウザーさんも全く好みではないけど(笑)、これを演じた松山ケンイチと言う俳優に惚れてしまいそうだ。追っかけの大倉孝二のツッコミも毎回爆笑。ほんと、腹抱えて笑わせてもらいました。
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# by galarina | 2008-09-02 16:23 | 映画(た行)

歩いても、歩いても

2008年/日本 監督/是枝裕和
<梅田ガーデンシネマにて観賞>

「さりげないのに、心に染み渡る是枝演出」
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是枝監督のきめ細やかな演出と登場人物たちへの優しい眼差しが感じられる珠玉作。すばらしかったです。物語を動かすものとして、数年前に亡くなった長男を取り巻く確執というのがあるのですが、むしろ私は是枝演出の素晴らしさ、巧みさに引き込まれて仕方がなかったです。 誰もいない廊下で母と娘のたわいもないおしゃべりが反響している。そんなカットに全ての人が自分の里帰りを思い起こしたことでしょう。

人物描写があまりにもリアルで、まるでこの家族を昔から知っているような錯覚に陥ります。また、それぞれの登場人物のちょっとした仕草や会話の端々にその人らしさが如実に表れています。例えば、長女の夫は「この家の麦茶はひときわうまい」とおべんちゃらを言う調子のいい性格。その時冷蔵庫の扉がずっと開けっ放しなんです。気になって仕方ありません。でも、それは彼のおおざっぱな性格を表しているんだと思います。このように全てのシーンに、人物たちの性格を裏付ける演出が成されていて、見事のひと言です。是枝監督の人間観察力に感服しました。毒のあるセリフは弟子の西川美和監督を思い起こさせるのですが、もしかして彼女の影響が逆に是枝監督にも出ているのかと思ったりもします。

また「ああ、実家に帰るとこんな感じだよな~」と思わず唸ってしまうシーンばかりです。実家の玄関先で遊ぶ孫たちは大人モノの「つっかけ」を履いていたり、息子家族に新しい歯ブラシを用意していたり。これらの描写があまりにもリアルで、うちも全くそうだ!と一シーン一シーン、思わず頷いてしまうものばかり。是枝監督が凄いのは、この細やかな演出があざとく感じられない、ということ。この辺は、ドキュメンタリータッチが巧い是枝監督ならではです。「誰も知らない」などでは、ドキュメンタリータッチが嫌味に見えたりしましたが、本作では皆無。実に自然です。

そして、俳優陣がみんな素晴らしいです。やはり、一番凄いのは樹木希林でしょう。この人は、化け物ですね。毎回役が乗りうつってます。私の記憶では「東京タワー」を受けるまでしばらく映画界から遠ざかっていたはずだと思うのですが、一体どうなってしまったんでしょう。蝶々を追いかけるシーン、見てはいけないものを見たようで背筋がぞくぞくとして、本当に怖かった。

それにしても、家族を描いた作品って、なんでこうも面白いのでしょうか。家族だからこそ、言いたいことを言う。家族だからこそ、言えない。そんなみんなの思いがすれ違ったり、くっついたりする様に釘付けの2時間。様々なところで笑いのエッセンスが散りばめられているところも本当にすばらしい。これまでの是枝作品の集大成と言ってよいのではないでしょうか。このところ、山下監督や塩田監督などの若手監督に気を取られていましたが、これで是枝監督の株が一気に急上昇です。
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# by galarina | 2008-09-01 23:11 | 映画(あ行)
2007年/ブラジル 監督/ブレノ・シウヴェイラ

「私だって、できることなら夢を子供に託してみたい」

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息子たちは一方的に音楽をフランシスコから強要されていたのだろうか。私には、とてもそうは思えなかった。音楽は、家族の夢であり、愛であり、潤滑油だった。ありったけの作物や父の形見と交換して、アコーディオンとギターを購入したフランシスコに妻は一度は眉をひそめたけれども、彼のその一途な思いがただの我が儘などではないことを悟っていたように思う。フランシスコは、生涯を通じて「音楽」という贈り物を子供たちに贈り続けたのだ。どん底まで貧しくなろうとパチパチと電気を付けたり消したりして無邪気に喜び、土地を手放した悲しみにくれることなく慣れない土木工事に取り組み、発売日の決まらぬ楽曲を同僚たちにも呼びかけ何度もラジオ局にリクエストし、そうやって彼は、いつも前向きに生きてきた。そんな父を喜ばせたいと思わない息子がいるだろうか。

あんなに音痴だった息子が少しずつ音楽の実力を身につけ、認められるようになる喜び。旅に出る息子を手放す寂しさ。家族の悲喜こもごもを描く前半部がとてもいい。一方、ミロズマルが成長してからを描く後半部は、実話ということもあり、スターになった彼の足跡を追っただけの感が強く、物語の深みにやや欠けるのが残念。

さて、本作のもう一つの楽しみ方。それは、鑑賞後、自分が誰の目線でこの物語を捉えたかを確認するということ。私は母親だけど、すっかりフランシスコ目線、つまり父親目線だった。しかし、他の方の感想を見るに、母親目線の方もいれば、子供目線の方もいるようだ。私自身は、先日見た「スクール・オブ・ロック」じゃないけど、大人ってもっと子供に体当たりで挑んでいかないといけないんじゃないかって、最近つくづくそう思ってる。だから、フランシスコがとことん彼らに情熱を傾けるその様が、それが時には思慮浅く見えようとも、何だか羨ましくて仕方なかった。実際の映像がかぶってくるエンディング。私には少々蛇足に思えた。だって、「僕が旅立つ日」を歌った切ない歌詞の楽曲がとてもすばらしくて、あの切ない旋律にしばし浸っていたかったんだもの。
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# by galarina | 2008-08-27 17:17 | 映画(は行)

スクール・オブ・ロック

2003年/アメリカ 監督/リチャード・リンクレイター

「一生懸命な大人でいようぜ」

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ぶっ飛びデューイの一挙手一投足に腹を抱えて大笑い。ロックを愛する自己中男を演じるジャック・ブラックの無軌道ぶりがおかしいの、なんの。ロックオタクっぷりを、堂々と子供たちに伝授するシーンがツボでした。特にウケたのは、伝説のギタリストやドラマーのビデオを子供たちに見せてるところ。好きなシーンだけ編集して、つなげてんの。いるいる、こんなヤツ。遊びに行ったら、部屋で延々こういうの見せられて、ウンチク語られたりすんのよね。まあ、オンナにはもてないタイプ(笑)。

全ての生徒1人1人に適材適所で役割を与えてあげるって言うのが、すごくいいんです。日の当たるバンドメンバーだけでなく、裏方も含めて「スクール・オブ・ロック」だって言う考え方。大人数の子供たちをまとめあげるって、結構難しいです。でも、照明担当、衣装担当…etc。彼らに対して、デューイが「いいぞ!すげえ!」って、褒めてやるから、みんな生き生きし始める。デューイは用意周到に子供たちをまとめようなんて全然思ってない。そこが見ていて爽快なんです。ぶっちゃけ、自分がコンテストに出たいがため。でも、子供って、一生懸命な大人にはつべこべ言わずについていくもんなんですよ。我々大人は、一生懸命な姿を子供に見せているだろうかって、ちょっと考え込んじゃいました。

ただ、一つだけひっかかることがあって、それはジャック・ブラックに頼りすぎなんじゃってこと。もし、違う俳優がデューイを演じたら、ここまで面白くなるかしら?もちろん、ジャック・ブラックありきの作品ってことはわかっている。でも、どこかで「彼が何とかしてくれる」という甘えがなかったかな?どうも、そう思わせてしまう脚本なんだな。もっともっと、磨けたはずですよ、この脚本。後半部、もう少し子供との絆、または校長とのエピソードに深みが出ればなお良かったな。でも、現在「2」の製作が進行中とのこと。次回は、映画館で見たいと思わされる作品でした。
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# by galarina | 2008-08-26 17:59 | 映画(さ行)