「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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カテゴリ:映画(は行)( 113 )

昼顔

1966年/フランス 監督/ルイス・ブニュエル

「どこまでも続く夢想」
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ブニュエルは学生時代、よく見ました。今回続編となる「夜顔」が公開されるということで、久しぶりに再見。

改めて見直してブニュエルらしいシュールさを満喫しました。カルトムービーの匂いがプンプンします。セブリーヌが思い描く性的妄想のシーンになぜかくすくす笑いが抑えられない。馬鹿馬鹿しいのを大真面目にやっているショートコントみたいなんだもん。変な公爵の城に招かれて死体の真似をさせられ、雨の中を放り出されるという妄想では、「ウィッカーマン(オリジナル)」を思い出しました。この妄想シーンのおかしさというのは、ドヌーヴのまるで感情を表に出さないお人形のような目のせいもあります。一体、どこを見ているのってくらい、虚ろなの。昼の顔と夜の顔を持つセブリーヌだけど、本当は一日中夢を見ているのではないかしら。ずっと、心ここにあらず。

ドヌーヴの美しさには本当にうっとり。惚れ惚れします。ピン1本でまとめたアップのヘアスタイル。あれは、日本人のストレートな黒髪では、絶対に不可能。ピンを外してはらりと垂れる艶やかな金髪。金髪の美しさはもとより、その髪の豊かさに驚きます。ふわっふわの髪。そして、サンローランの素敵なお洋服。脱いだら陶器みたいに白い肌。やっぱり、ドヌーヴは最高。

セブリーヌが思い描く歪んだ性への欲望を、逆に男目線からの表現と捉える方もいるようです。さて、本当にそうでしょうか?夫とはできない。しかし、行きずりの男には快楽を感じる。それは、自分に罰を与えるという行為に潜む性的快感に根ざしているのかも知れませんし、そもそもマゾヒスティックな資質が彼女にあったのかも知れません。いえ、女というものは、自分を満たしてくれるものに対して根本的に貪欲な生き物と言えるかも知れません。短いカットバックで、セブリーヌの少女時代が映し出され、何かトラウマを抱えていることも示唆されます。しかし、作品の表面上はセブリーヌの本当のところがわからない、という見せ方にしている。そこが、この作品のすばらしさではないでしょうか。まあ、あの美しいドヌーヴを鞭で打つわ、顔に泥は投げるわ、雨の中に放り出すわで、さぞかしブニュエルは映画内プレイを堪能したんだろうというのは確実に推測できます。
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by galarina | 2008-04-02 23:00 | 映画(は行)

バンテージ・ポイント

2008年/アメリカ 監督/ピート・トラヴィス
<TOHOシネマズ梅田にて観賞>

「90分にぎゅっと凝縮」
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こういう手が込んだ作品、結構好きですね。しかも、上映時間が90分程度とコンパクトなのがとてもいい。最近、無駄に長い映画多いですからね。ここは、ワタシすごく評価高いです。逆回しという手法に溺れず、しっかりと誰もが納得できる結論にまとめあげた手腕も見事。非常にすっきりとして良い脚本ではないでしょうか。

テキパキとカメラワークを指示するテレビ局のプロデューサー、シガニー・ウィーバーのシーンから始まるのですけど、あのカメラを何度も切り替えるリズミカルな展開がそのまま作品のスピードに繋がっているんですよね。これは、まるでオートバイの発進みたいです。1速からエンジン全開。2速、3速とギアをあげていくんですが、その度に主人公が変わる。それで、何度も逆回しがあって、いいかげん飽きたなって頃に、一回物語をひっくり返すんです。これが巧い。普通、ひっくり返すというのは、ラストに持っていきたいところなんですけど、これで一度観客は目が覚めるわけです。ラストは、ゴールまで直線コースをアクセル全開。

このカーチェイスのシーンも非常にダイナミックでハラハラします。ヨーロッパの石畳を車で追いかけっこするというのは、最近のハリウッド作品でよく見かけますが、「ナショナル・トレジャー」よりも断然興奮しました。それにしても、何台車を壊したんだろう…。

舞台にスペインのサラマンカという街をチョイスしたのも、とても良かったんじゃないかと思います。というのも、何度も逆回しをするという手法上、しつこく街並みが映ります。特にメイン会場を捉えたロングショットは毎回登場しますが、不思議と飽きないのです。みんながよく知っているヨーロッパの都市ならば、このしつこい逆回しも手伝って、見ていて飽きてしまったんじゃないでしょうか。赤茶けたシックな石造りの街並みが気ぜわしさを緩和しているような気がしました。

見終わってあれこれ考えるという類の作品ではないですが、観客の興味をとらえて離さないということで、かなりのクオリティ。面白いから見て!と誰にでもオススメできる作品だと思います。
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by galarina | 2008-04-01 21:49 | 映画(は行)
2007年/日本 監督/吉田大八

「サトエリ、大健闘」
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なかなか面白かったです。兄や妹にある田舎者の鬱屈感を見ていると「松ヶ根乱射事件」を思い出しますが、最終的には妹の再生物語へと収束します。なので、「松ヶ根」のようなシュールな感じではなく、ホラーテイストのホームコメディといった感じでしょうか。ストーリーの不気味さとは相反して、演出はとてもポップな雰囲気であまり生々しさを強調していない。なので、観る前は結構構えていたのですが、さらっと見れてしまいました。

自意識過剰オンナ、澄伽のキャラクターは、私の敬愛する漫画家岡崎京子氏の作品によく出てくるタイプですね。「ヘルタースケルター」の「りりこ」なんぞを、実際に佐藤江梨子はお手本にしたのではないかと思ってしまいました。抜群のプロポーションを存分に活かし、存在感を見せます。ミニのワンピースから覗く長い生足が、古い日本家屋の階段を降りてくる。そのアンバランスさ、気持ち悪さを存分に楽しみました。この役は、まさに当たり役でしょう。目を剥いた顔も怖いし。

舞台は田舎ですが、結局テーマは自己表現の方法、ということでしょう。4人の家族、それぞれが自分本来の姿を己の中から解放したいと思っている。その方法が間違っているのが、姉。もがいているのが、妹。諦めているのが、兄。知らないのが、兄嫁ではないでしょうか。それぞれのキャラのヘンさは少々あざとく感じられるものの、のどかな田園風景が舞台というのが効いていて、しっかりとキャラが際だっています。また、設定の毒々しさの割には、誰もが見やすい作品に仕上げられているのは、CM出身監督だからかも知れません。ただ、ワタシの個人的な趣味としては、もっと鋭角な切り込みが欲しかったところです。でも、ホラー漫画がいいです。この漫画のクオリティの高さが間違いなく作品を支えてます。初長編にしては、非常に完成度高いのではないでしょうか。これからが楽しみな監督です。そうそう、エンドロールでわかった「明和電機」がツボでした。
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by galarina | 2008-03-29 23:29 | 映画(は行)

ファニーゲーム

1997年/オーストリア 監督/ミヒャエル・ハネケ

「悪夢を見て、我々は変われるのか」
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映画を気分転換や楽しく過ごすためのものと捉えている方は、ご覧にならない方が良いと断言します。

こんなに胃が痛い映画は他にはありません。馬鹿馬鹿しい話ですが、最初から最後までスクリーンの前で神に祈り続けました。この家族を助けてください、と。そもそも、観客を裏切ることを得意とする監督ですから、いくらこちらが期待しても駄目なんだろうなというのは、予測できます。しかし、これだけきっぱり撥ね付けられると、今度は、「これは映画なんだ、現実じゃない」なんて心が叫び出します。すると、そういう心を見透かしたかのように、この馬鹿男どもが、したり顔で「現実」と「虚構」について話し始めるのです。

「虚構は今見ている映画」「虚構は現実と同じくらい現実だ」とね。

この期に及んで、事態を正視できぬ心の弱さにがつんと一撃を食わせる。ハネケの意地悪ぶりには本当に参ります。しかし、本作が観客をただ不快にさせるだけの暴力映画でないことは、この「現実」と「虚構」にまつわるハネケの提示があるからこそでしょう。目の前で行われている暴力をただ眺めているしかできない、我々観客。スクリーンの向こうの出来事ですから、何の手出しもできない。当たり前です。しかし、パウルは、スクリーンに向かってウィンクしたり、話しかけたりして、我々を挑発します。それはまるで「アンタももっとゲームを面白くして欲しいんだろ?」と言わんばかりです。そして、虚構は現実と等しいというテーゼ。

確かにこの映画を見始めた時から、我々は強制的にゲームの参加者にさせられています。しかし、そんなのあんまりではありませんか。観客にだって意思はあります。もしかしたら、「ファニーゲーム」不買運動でもして、DVDを燃やして見せたりすれば、ハネケは満足なのでしょうか?

何度も見る気になれない映画。こんなゲーム一度参加すれば十分でしょう。なのに、ハネケはハリウッドでリメイクしたようです。ハネケは「映画が娯楽のためにあるというのなら、私の映画は存在する意味がない」ときっぱり言っていますし、これまでの作品を見ても、アメリカという国を意識しているのはわかります。よって、ハネケ作品の中でも「暴力」に絞った本作をハリウッドという場所でリメイクする、ということそのものに意図があるのでしょう。リメイクのトレーラーを見ましたが、特にナオミ・ワッツの演技に背筋がざわざわとしました。アメリカの有名人俳優が演じることによって、この突然もたらされる理解不能な暴力は、さらに我々の身近なものに感じられるに違いありません。私は再びこのどうしようもない物語を見るのでしょうか。またゲームに参加してしまうのでしょうか。それは、私もまたパウルのような邪悪さを持っていることの証明にはならないでしょうか。恐ろしい映画です。
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by galarina | 2008-03-20 20:38 | 映画(は行)

ホリデイ

2006年/アメリカ 監督/ナンシー・マイヤーズ

「人物造形が甘い」
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大人のロマンスとして評価が高いんですが、私はちょっと辛口で。

ホーム・エクスチェンジは、面白いですね。身の回りの環境をごっそり変える。こんないい失恋からの立ち直り方法はないんじゃないでしょうか。でもね、4人の登場人物全てに作り込みの甘さを感じます。特にアマンダ。経営者の割にはキャピキャピし過ぎです。両親の離婚以来、涙を見せずに頑張ってきた、という設定なら、もう少し自立心のある女性、業界で生き抜いてきた自信や苦労、そういうものが見えるはずです。

脚本上、肉付けされたアマンダのあれこれ(それは、キャメロン・ディアスのキャラ頼みに見せないためのあざとさにも感じられる)とキャメロン演じるアマンダのイメージが、フィットしていない。そこがとにかく終始気になりました。申し訳ないですが、キャメロン・ディアスって下手だなぁ…。

また、ラブストーリーとしての、ドラマティックな盛り上がりに欠けます。心にじわ~んと来るのは、むしろアイリスと90歳の脚本家アーサーとの交流であったりするわけです。このエピソードは、サイドストーリーとして面白い展開には違いないのですが、メインを食ってしまうようでは…。むしろ、ジャック・ブラックのキャラをもっと立たせて欲しかった。悪い話じゃないけど、取り立ててグッと来るラブストーリーでもないなあ、というのが正直な感想です。まあ、お気楽なデートムービーにはピッタリというところでしょうか。
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by galarina | 2008-03-11 23:21 | 映画(は行)

ハッスル&フロウ

2005年/アメリカ 監督/クレイグ・ブリュワー

「ナイスバディねーちゃんを下からぐいーんとあおるのだ」

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車で売春させる女をしきる、いわゆるポン引きの裏稼業を「ハッスル」と言うんだね。知らんかった。そのハッスル稼業をしているDジェイが、もう一度音楽で成り上がろうとするお話。

主演のテレンス・ハワード、「クラッシュ」や「ブレイブワン」のスマートな黒人の面影なし。黒人ラッパー特有のにちゃにちゃした英語が板についていて、ポン引き稼業のダメ男を熱演。アカデミー賞ノミニーも納得だね。ラップもすげえうまいぞ。白人ピンプ、ノラのスレンダーなミニスカ姿を道ばたからぐいーんとあおる、そのカットの美しさ。キメたいショットがびたーっと決まるのが、サイコーに気持ちいい。それは、おそらく、車で売春、そこから醸しだれるイヤらしさを敢えて見せていないから。

これ例えば日本で言うと、売れない演歌歌手が一旗揚げてやろうみたいな、ベタで泥くさーいストーリー。今どき「Dジェイ」なんて名前もダサすぎるし。有名人と知り合いなんてうそぶくのもカッコ悪いし。でも、そのダサさが、演出次第で「かっけー!」みたいな瞬間をキラリと生み出す。そこが、この作品の醍醐味。

タランティーノもそうだけど、やっぱり車の映像を撮るのが、アメリカ人はうまい。ガチャガチャとカーラジオのボタンを押したり、銀色に輝くホイールがぐいんぐいん回るのを路面からとらえたり。ラップという音楽の力強さ、シンプルさと、映像がぴったりマッチしてる。汚ねーボロアパートで、録音作業。Dジェイの魂の叫びが、ビートに刻まれる。うまくいかなくて、ケンカしたり、投げ出したり。あんたら高校生かってくらい、青いし、熱いし。そんでもって、スタジオにはこれがないと、ってシャグが持ってきたもの。おいおい、それ、ラバーライトじゃん。アタシは、ラバーライトだけの照明が光るショットバーを開くのが夢なのよね。BGMはラップじゃなくて、ソウルだけどさ。一つ買ってみるかな、アタシも夢に近づけるかな。こりゃ、めっけもんの1本。未だに、Whoop That Trick!のフレーズが頭駆けめぐってる。
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by galarina | 2008-03-10 23:50 | 映画(は行)

星になった少年

2005年/日本 監督/河毛俊作

「音楽の力で泣かせる作品ではないはず」

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当たり前だけど、音楽は映画にとって、とても重要な要素。だから、双方がしっかりと溶け合うように作品を仕上げるべきなのに、音楽が流れると急にボリュームがぐわ~んと上がって、「さあ、泣いてくださーい」とごり押しされる。本作は、音楽の力など借りなくても、話そのものが十分に感動的。これ見よがしに坂本龍一の音楽をかぶせる必要など全くないのに、なぜこうなってしまうのか。「世界の教授」に対する遠慮か、それとも盛り上げたい一心か。いずれにしても、この音楽の使い方は、物語がそもそも持っている吸引力を弱めているとしか思えない。それは、がんばって演技している俳優にとっても、作曲家にとっても、失礼な使い方ではなかろうか。

私は坂本ファンなので敢えて言うけど、彼の音楽は旋律がとても特徴的ゆえに、作品の中で音楽が一人歩きしてしまう。かなり神経質に扱わないと、作品のイメージごとごっそり持って行かれる、かなり取り扱い注意なシロモノだと思う。

そして、このような感動作をそれなりの完成度でもって仕上げる力が日本映画には、まだまだ足りないなあというのを痛感する。若くしてタイに渡り象の調教師を目指した少年が志し半ばであっけなく事故死してしまう、というプロット(しかも、実話)は、とても個性的だし、つまらない小細工などしなくても、確実に多くの人々の心を掴む作品になるはず。なのに、それができない。家族間の確執に迫っていないし、演出も凡庸。この素材を韓国へ持っていったら、きっと一定レベルの感動作に仕上げてくるような気がする。オーソドックスな物語をオーソドックスにきちんと仕上げる。そんな、映画を作る基礎体力がこの作品には欠けている。常盤貴子は母親には全く見えないし、高橋克美も存在感が薄すぎる。ミスキャストだと思います。物語をいちばん引っ張っているのは、象の存在。それが、せめてもの救いです。いい素材なのにとても残念な仕上がり。
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by galarina | 2008-03-05 23:33 | 映画(は行)
2006年/アメリカ 監督/キャサリン・リントン

「シンディの歌声に涙が止まらない」

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トランスジェンダー(性同一性障害を持つ人)の青少年の学校「ハーヴェイ・ミルク・ハイスクール」のためのチャリティー・プロジェクトを追ったドキュメンタリー。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督と、オノ・ヨーコら個性派ミュージシャンたちによる『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のトリビュートアルバム制作の模様を、4人の生徒たちのエピソードと絡めて映し出す。

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本作は、2つのドキュメンタリー作品が同時並行で描かれてゆく。一つは、有名ミュージシャンに参加を依頼し、トリビュートアルバムを完成させるまでのドキュメント。もう一つは、ハーヴェイ・ミルク・ハイスクールに通学する4人の高校生の日常を追うドキュメント。2つのドキュメントが同時に存在しているので、正直それぞれ深掘りができずに中途半端な感じもしていた。ところが、終盤。シンディ・ローパーの歌う「Midnight Radio」で、涙腺が決壊。4人の高校生が人生の新たな一歩を踏み出すその様子とシンディの圧倒的な歌唱力を引き出すレコーディング風景、2つのドキュメントがここで見事に合致して、大きなうねりを起こす。版権の問題だろうか。シンディの姿が映像に映っていないのがとても残念なのだが、それでもこの歌声は必見ならぬ必聴。1人でも多くの人に彼女の歌う「Midnight Radio」を聴いて欲しい。

また、「Midnight Radio」に限ったことではなく、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」それぞれの楽曲の素晴らしさを改めて実感する。性同一性障害の若者たちを救うチャリティー活動である、と言う前に、一つひとつの楽曲がミュージシャンたちに歌いたいと思わせる魅力を持っていることが、参加の決め手となったのは間違いないと思う。

「ヘドウィグ」の製作者たちも、ハーヴェイ・ミルク校の関係者も、共に若者たちの側に付いている、いわば味方たちばかりである。なので、当たり前だが映画は最初から一貫して彼らに寄り添って描かれてゆく。だからこそ、ラストシーン、校門前に立ちはだかる公立化反対派の出現が、浮き足だった私の心を現実に引き戻す。このきりりとした痛み、それもまたアメリカの現実であるがゆえに、多くの人に本作を見て欲しいと願う。
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by galarina | 2008-02-24 22:04 | 映画(は行)
2006年/アメリカ 監督/クレイグ・ブリュワー

「オンナの私でもパンツに釘付け」
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これは、面白かった。すごいカッコイイショットの連続で。冒頭のトレーラーに中指立てるクリスティーナ・リッチとか鎖を巻き付けてソファで眠る姿とか。あんまり見た目がカッコ良すぎるもんだから、中身の方、つまり物語で言うとラザラスとレイ、ふたりの関係性に、もうひとひねり、ふたひねりあればなあ、と言う欲も出てくるのよね。「エクソシスト」の少女と神父みたいにさ、もっとラザラスを愚弄して、誘惑するレイでも良かったんじゃないの、なんて。

それに、まるで猛獣をつなぐような鎖を出してくるもんだから、監禁にまつわる物語性よりも、むしろ華奢なクリスティーナ・リッチが黒人のオッサンに太い鎖でしばられている絵を撮りたいという意思の方が強いのかも、なんて穿った見方をしてしまうんだけど、サミュエル・L・ジャクソンとクリスティーナ・リッチ。この二人の演技がそんな疑念を吹っ飛ばしてしまう。

特にクリスティーナ・リッチ。前半、ほとんどパンティー一枚。これぞ、女優ですよ。あの小さい体で男たちに弄ばれる描写が痛々しいのなんの。まるで、ボロぞうきんのよう。でも、演技は実に堂々としていてすばらしい。この延々パンツ一丁(しかも白いパンティーだぞ)には、作り手の明らかな狙いがあるはず。でも、それがどうだって言うのよ、と言わんばかりに目の玉ひん向いて迫ってきます。日本の若手女優陣は、これを見なさい!と言いたい。サミュエル・L・ジャクソンの老けっぷりも驚きました。「パルプ・フィクション」の颯爽とした男っぷりはどこへやら。白いランニングでトラクターを運転する姿がハマリすぎなほど。そんな、やつれ男のブルースっつーのも、なかなか女心に響きます。もがきながらも前向きに生きる底辺の人たちの交流をじめじめした演出ではなく、あくまでもクールに見せる。ハリウッド映画ではなくアメリカ映画を見た!という気分になりました。
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by galarina | 2008-02-14 23:32 | 映画(は行)
2003年/アメリカ 監督/ゴア・ヴァービンスキー

「シリーズ1から見通してみて思うこと」

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シリーズ中、このパート1が一番好きだという人も多い。その気持ちもわかります。でも、私は海の荒らくれどものやりたい放題のイメージが定着してしまったので、このパート1は、むしろうまくまとまり過ぎているとすら思えるんですね。全く、不思議なもんです。

確かに物語はコンパクトで見やすいです。エリザベスを中心に観れば、非常にオーソドックスなお姫様物語のようにも感じられます。幼い頃から心を通わせる男との身分違いの恋。そこに、親の決めた許嫁と突如現れた魅力的な不良男。不良男に惑わされるのは、まるでマリッジ・ブルーに陥った女の迷い心のようでもあります。しかし、最後には、自分の思いを再確認して彼と甘―いキスを交わす。物わかりのいい許嫁は身を引き、風のように現れたアイツは海賊船と共に海の彼方へ去っていくのでありました。めでたし、めでたし。

このようにエリザベス目線で考えると、なるほどディズニーらしい映画なのかも知れません。何せ元ネタがアトラクション。よくぞここまで膨らましたな、と感心します。しかし、ヒットしたおかげでパート2を作ることとなった。主人公のふたりはキスして一件落着となった物語を、再び解体しなければならない。そこで、予想外に人気となったジャック・スパロウから物語を広げてやろうということになったんでしょう。

善人か悪人かわからないジャック・スパロウというキャラクターが注目されたのは時代の必然でしょう。悪い奴がいて、ヒーローが退治する。その構図に、もはや小学生ですら嘘くささを感じ取っています。それほど、世の中の善悪の判断基準は曖昧になっている。悪いことをしても罰を受けるわけでもなく、平然とのさばる大人はごまんといます。でも、一方でそんな世の中だからこそ、映画の中では善悪がはっきりしていて、悪い奴が懲らしめられる方がスッキリするのだ、と言う人もいるでしょう。しかし、その虚構の世界はスッキリしても、映画鑑賞の喜びの一つである余韻を味わえない。ジャックという人間が抱える混沌、善も悪も呑み込んでしまう海の底の不気味さの方に私はリアリティを感じます。

おそらく、その根拠は「正義」の不在でしょう。海賊に正義なんてない。それが、見ていて気持ちいいんですね。だって、どっちにも寝返っちゃうんですから。「アラバマ物語」じゃありませんが、性善説に基づく正義を振りかざされることに、私は飽きてしまったし、昨今の映画の正義の表現に作り手が敢えて注入したい何らかの意図を感じ取ってしまう。誰の側にもつかない。ただ海に生きる。そのスタンスは、まるで西洋中心の経済システムから全く離れて存在する少数民族の姿のようでもあり、何が善で何が悪かわからない世の中を生き抜くしたたかさを感じるのです。海賊、バンザイ!
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by galarina | 2008-02-10 20:18 | 映画(は行)