「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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カテゴリ:映画(た行)( 49 )

2005年/カナダ・フランス 監督/ダイ・シージエ

「映像の美しさは必見」

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孤独な魂がたとえようもなく美しいものに出会えば、おのずとそれを愛するようになるもの。これ、必然なり。ふたりが愛し合っていることに微塵の疑いもないが、発端は孤児として簡素な生活を送っていたミンが、初めて圧倒的な美を目の前にし、ひざまづきたい衝動にかられたことではないだろうか。それほど、蒸した薬草の上でまどろむアンの裸体は美しかった。それゆえ、あの薬草が幻覚を引き起こすという話は、余計なものとすら感じられたのだが。

ダイ・シージエ監督は中国で生まれ、フランスで映画を勉強したとのこと。だからだろうか、観客が期待するアジアン・エキゾチックなムード作りがあまりにツボを得ていて、どのシーンもため息が出るほど美しい。中国人監督ゆえ、その描写は誇大表現ではないのだろうと、安心してこの世界に入り込むことができた。ハリウッドがさんざん犯してきたジャパニーズ・エキゾチズムの間違いを、誰か日本人監督が正してくれないものだろうかと思わされる。「さくらん」じゃダメなんだよ。

アンの虜となったミンの心の移り変わりをもっと感じたかった。ふたりの間に肉体関係はあるが、それもまた孤独なもの同士が体を温め合っていることの延長線上の行為のように思える。ならば、ふたりの結びつきは肉欲ではなく魂。しかしラスト、悲劇に向かいながらもふたりの様子のあまりにもさばさばとしたあっけなさが物足りない。あくまでも清らかな心根にこだわりたいのはわかるが、ふたりの純粋な愛を前にして感極まって涙あふれる、そんな感情も残念ながら湧いてこないのだ。しかし、この映像美は必見。ふたりの愛の形よりも、ふたりの愛を彩る植物園に心奪われた。
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by galarina | 2008-06-16 23:35 | 映画(た行)

タロットカード殺人事件

2006年/アメリカ 監督/ウディ・アレン

「ウディ、ますます絶好調」
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なんとまあ、肩の力の抜けた軽やかな作品でしょう。これは、まるで老練なJAZZミュージシャンのアドリブ演奏のよう。これまで、何度も何度も演奏してきたからこそ出せる味わい、隙のなさ。ウディ監督、ロンドンに拠点を変えてから、ますますノリにのっていませんか。実に楽しい95分でした。

前作はセクシー路線だったスカーレット・ヨハンソンが本作ではキュート娘に変身。スカーレットのプロモーション・ビデオだと感じる方がいたら、それこそこの映画のすばらしさの一つかも知れません。といいますのも、このサンドラは記者志望の割にはおマヌケですし、すぐにオトコに引っかかるし、本当はどうしようもないキャラ。でも、非常に魅力的に見えるのは、ひとえに彼女の演技力とウディの演出のおかげでしょう。ビン底丸めがねをかけ、口を開けて歯科矯正の器具をパカパカと動かす彼女のかわいさと言ったら!こんな仕草が愛らしいなんて、ちょっと他の女優では考えられません。次作では、どんな女性を演じるのか、今から楽しみ。(って、次も出るって勝手に決めつけていますが)

背景は殺人事件ですけど、んなこと何の関係もないですね。まあ、本当にどーってことないお話で、素人探偵のドタバタ喜劇です。だって、現場になんでタロットカードが置いてあるかなんて、真相はちっとも明らかにされませんもの。でも、テンポが良くて、ユーモラスで、みんなおしゃべりで、何もかもがいつものウディ流。このワンパターンノリは、まるで吉本新喜劇のようです。ラストのドッチラケなんて、吉本ばりに椅子から転げ落ちそうになりました。それでも、こんなに小粋なムードが出せるんですもんね、流石です。どこまでも我が道を行くウディ・アレンに感服致しました。ああ、楽しかった。
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by galarina | 2008-04-20 23:35 | 映画(た行)

大日本人

2007年/日本 監督/松本人志

「ちょっとずるい、と強く思う」
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初監督作品の割には、えらいひねくれたもん作りよったな、というのが率直な感想。大体デビュー作と言うのは、取りたい気持ちが募って募って出てきた発露だったり、自分の中に溜まっていた澱を表出させたものだったりすることが多い。見かけは陽でも陰でも、ふつふつと湧き出るエネルギーのようなものがあって、私は「初監督作品」というジャンルが結構好きだったりする。

だけども、「大日本人」は松ちゃんのコントをスクリーンを使ってやったらどうなるか、という実験作のよう。実験するということは、確かに大きなチャレンジなんだけど、「映画」そのものに対峙しているというよりは、あくまでも手段としての「映画」に着目してみました、という感じ。フェイク・ドキュメンタリーのパロディというひねくれ具合も私は気に入らない。デビュー作なら、もっと真正面から映画に取り組んで欲しかったと思う。と、考える私は、頭が堅いんだろうか。

本作において、映画的時間が流れるのは、インタビューシーンだけだ。冒頭のバスの車窓から外をみやる大佐藤、スクーターに乗って変電所に向かう大佐藤の後ろ姿。インタビューシーンがなければ、ただのコント集と言ってもいいんじゃないか。でも、映画を映画たらしめているものがフェイク・ドキュメンタリーのパロディだなんて、全く人を食ったことをしやがるもんです。

タイトルはもちろん、神殿の前で変身したり、日本の若者を憂いたり、右よりな表現が続く。北朝鮮を思わせる赤鬼や最終的にはアメリカ人のヒーローに助けられるという皮肉も含め、一体そこにどれだけの強い意志で政治的メッセージを入れたかったのか。どれほど、肝を据えて赤鬼を出したのか、私には想像がつかない。「味付け」としての政治色なのか、それともみなぎる意思をスカしての表現なのか。松ちゃんが面白くないという批評をまともに受けて立ってまでも、作りたかった作品には感じられない。その辺の曖昧さが、ずるいようで、小賢しいようで。とどのつまり、そういう作品がデビュー作って言う斜に構えた感じがどうにも気に入らない。
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by galarina | 2008-04-18 23:45 | 映画(た行)
2003年/フランス・オーストリア・ドイツ 監督/ミヒャエル・ハネケ

「忍耐力テスト」
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どこの国かも、何が起こったのかもわからないまま、粛々と物語が進み、最初の30分くらいは本当にイライラさせられます。これなら、まだ断片手法のほうがマシです。断片がヒントだと思えば、まだ謎解きをしてやろうという意欲も湧くものです。しかし、本作は一応時間通りに物語が進みますので、その成り行きを観客は眺めているしかありません。でも、何も提示してくれないので、我慢するしかありません。そして、全て見終わってようやく、合点が行きます。どこぞのサスペンスみたいにラスト30分で盛り上がるんではないですよ。全てです。全て見て、ああっ!となるんです。ある意味、ミステリーですね。しかし、忍耐力を伴います。

本作、主人公アンナのふたりの子供とはみ出し者の少年以外に子供が全く出てきません。それは、一つの伏線なんですね。いくら大災害とは言え、子供はみんな死んだということはないでしょうから。しかし、諍いの絶えない飢餓状況にどうしても目が奪われてしまいます。そうこうするうちに、姉の方が、死んだはずの父に手紙を書くことで精神的な安定を図ろうとしたり、盗みを繰り返す少年とコミュニケーションを取ろうとしたりします。つまり、極限状態に置かれた子供(姉)が、何とかぎりぎりのところで生き抜こうとする心理状況は見て取れるわけです。しかし、これまたハネケのいじわるな「引っかけ」であることを、最後の最後になって思い知ります。

弟の名前は「ベニー」。「ベニーズ・ビデオ」のベニーです。こんな大きなヒントを見逃していたとは迂闊でした。冒頭、青い鳥が死んだ後、私はすっかりベニーの存在を軽視していました。時折、集団から外れて家族を心配させたりしますが、姉のように行動を起こすことはほとんどなく、まるで存在していない、またはいても邪魔な存在のようになっていく。まさにそれこそ、ハネケの目論見だったわけです。

ショックでした。私には、大人のエゴイズム、無神経さを描いた作品のように思えるのです。私が本作でベニーのことなどすっかり忘れていたように、大人は少年たちの抱える闇に気づこうとしない、というハネケの警告ではないかと。(何せ名前がベニーですから)しかも、ベニーが取った行動のやるせなさを考えると、大人の何気ないひと言でも少年は傷つき、深く己と対峙するのがわかります。これは、まるで絵本のような語り口ですね。もし冒頭、「あるところにふたりの姉弟がおりました。そして、大きな災害がやって来て、人々は食べるものもないほど困っていました」というテロップが流れれば、きっとすんなり物語に入っていけるのになあと思います。でも、意地悪なハネケはそんなことしません。我慢して、我慢して見続けた後に、大人である我々は大目玉を食らい、深く反省させられるのです。
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by galarina | 2008-03-19 20:44 | 映画(た行)
1992年/アメリカ  監督/デヴィッド・リンチ

「ローラの弔い」

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ビニールシートにくるまれていたローラは、あんなに美しく魅惑的だったのに、本作のローラは泣いてばかり、脅えてばかり。しかも、おばちゃんみたいに野暮ったいファッションセンス。ちっとも美人じゃないの。ごめんね、やっぱり死体のままでいてくれた方が良かった、なんて。また、ローラの親友、ドナをララ・フリン・ボイルが演じなかったのは、何とも残念。ヌードシーンがあったため、当時付き合っていたカイル・マクラクランが反対したのだろうか。テレビ版のドナとはイメージが違いすぎる。

確かに公開当時は喜び勇んで見に行った。ドラマシリーズでどこまで見ていたのか今となっては記憶がないが、もう一回確認したくて、納得したくて映画館に足を運んだような気がする。改めて見て、これは、ドラマシリーズでリタイアした人向きかも、と思う。ここをボーダーラインにすればいいのに、と以前語ったドラマシリーズのepisode16まで見終えて、この映画版を見るのが最もツイン・ピークスを堪能する方法と言えるかも知れない。というのも、やはりテレビシリーズ序盤の淫靡な世界観が圧倒的に映画版のそれを上回っているからだ。

しかし、悪の化身ボブに体も魂も乗っ取られたというのに、ローラは、天使に見守られて死んだ。その事実は、死後のローラが、安寧の地にいることを示唆している。つまり、リンチはローラを本作で成仏させたとは言えまいか。テレビシリーズで死体からスタートし、散々もてあそび、いたぶったローラという少女を、リンチはこの作品で無事天国、いやホワイトロッジに送り届けた。これは、ローラを弔うために撮られた作品かも知れない。
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by galarina | 2008-03-09 22:21 | 映画(た行)

ダンシング・ハバナ

2004年/アメリカ 監督/ガイ・ファーランド

「いい!いい!ディエゴ・ルナがいい!」
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はい~。すっかりヤラれましたわ。久しぶりに胸をきゅぅ~んとさせられる男に出会えました。ありがたや、ありがたや。「天使の口、終りの楽園」でガエルと共演していたディエゴ・ルナ。ガエルくんがワイルド系なら、ディエゴくんはキュート系。「天使の口」のディエゴくんもいい感じでしたが、今作ではラテンダンスでセクシーぶりをいかんなく発揮。はあ、私もあと20歳若かったら…と本気に思わせてくれるほど、良かったです。(若くなっても、どーにもならんけど)

彼の魅力は目ですね。タレ目で人なつっこくて。熱気にむせかえるクラブ「ラ・ローザ・ネグラ」。ド迫力の生バンド。ハビエルの汗で濡れた肌。白いシャツに揺れるペンダント。うねる腰つき。こんな所で、あの目で見つめられたら、どんなオンナだって、オチます。私もラテンなイケメンと「ラ・ローザ・ネグラ」行きたいです!踊りたいです!なんか、かなり壊れてきたので、冷静に、冷静に。

えーっと、主演の女の子はなんて名前でしたっけね?何とかガライって子ですけど、フランソワ・オゾンの最新作に出てまして、自己中の女流作家を堂々と演じていますが、本作とは別人みたいです。私はほとんど、ディエゴくんしか目で追ってませんでしたが、映画としては出会いからラストのダンスに向けて、どんどん彼女が魅力的に変化していくのをしっかり見せられています。プロダンサーの夢を結婚によって諦めたとおぼしき母親との交流についてもう少し描いてくれたら物語にも厚みが出たのになあという気がしなくもありませんが、まあダンス映画はダンスシーンのできが良ければ良いほどいいわけでして、野暮なことは申しますまい。

あれだけ接近して情熱的なダンスを踊りながらふたりがなかなかキスしない、という焦らせ方も憎い。また、ありきたりなハッピーエンドでないのも、いい。キューバ革命という一大事も盛り込みながら、ただのダンス映画に終わらせない脚本もなかなか。と、その他適当に褒めておいて(笑)、とにもかくにもディエゴ・ルナを見よう!女子の皆さん。

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by galarina | 2008-02-20 22:37 | 映画(た行)

デビルズ・バックボーン

2001年/スペイン 監督/ギレルモ・デル・トロ

「生き残る子供たち」

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世の中は戦争のただ中、自分はひとりぼっち、唯一の逃げ場であるはずの孤児院にも慈悲深いシスターがいるわけでもなく、優しき父を思わせる神父がいるわけでもない。むしろ、信用ならないひと癖もふた癖もある大人だけ。そこへもってきて幽霊の出現です。子供たちの精神状況は極限にまで追い詰められていく。だけど、どんなに悲惨な境遇であろうとも、サバイブしていく。それが、子供。どんなに追い詰められても、生き抜く道を選択する子供たちの逞しさが生々しく描かれています。

老いた義足の女院長と逞しい若い用務員が肉体関係にある辺りは、さすがアルモドバルがバックについているのもさもありなん、という倒錯した世界。個人的にはこの辺のきわどい描写はもう少し物語としても煮詰めて欲しかったところ。しかし、地下室に蠢く子供の幽霊、ホルマリン漬けの幼児の遺体など、妖しげなムードは十分堪能しました。

幽霊が出てくるからと言ってホラーのジャンルと呼ぶべき作品ではありません。また、本作を「スタンド・バイ・ミー」を引き合いに出す人もいるようですが、子供が逞しくなれば何でもかんでも「スタンド・バイ・ミー」に例えるのは少々安直ではないでしょうか。戦争を描いている作品でもあり、ずるい大人を描いている作品でもあり、殺された子供の怨念を描いている作品でもあり、一概に一つのジャンルでくくることのできない豊かな世界を持つ作品だと思います。しかし、裏を返せばその突出のなさが、作品全体としての個性を奪ってしまったような気もします。というわけで次回作「デビルズ・バックボーン」は評判も上々のようですので期待してDVDを待ちたいと思います。
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by galarina | 2008-01-20 22:03 | 映画(た行)

天然コケッコー

2006年/日本 監督/山下敦弘

「スタンダードにしてスタンダードに非ず」

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「ジョゼ」や「メゾン・ド・ヒミコ」を書いた脚本家渡辺あやとのコラボレーション。胸一杯に膨らんだ期待を見事に満足させてもらった1本でした。山下作品と言えば軽妙な「間」のセンスを活かした作風ですが、狙い澄ましたような「間」は本作では多用していません。バカの一つ覚えみたいで恐縮ですが、やはり構図ですね。とても美しいカットの連続です。エピソードとエピソードの間にインサートされる花やトマト、稲穂などのカットは田舎を表現するにはあまりのも凡庸なアイテムでありながら、実に清々しくスクリーンを満たします。草花の位置から青空を取り込んだ「あおり」のショットなど、本来ありきたりで見飽きた構図のはずなのに、その美しさに見とれてしまう。また、浜辺や田園風景を捉えたロングショットもきれいです。

そして、「間」の代わりに本作では「ゆるやかな時の流れ」を捉えようとしたかにも思えます。スクリーンの右から子供たちが現れ、左へと消えていく。そんななんでもないシーンでも、田舎ののどかさを存分に味わえます。子供たちの歩く速さがとにかく遅いのです。しかも、これだけ田舎の子供たちならおそらく自転車に乗るはずです。でも出てきません。バスが走る絵もありません。山下監督は「速度」を感じさせるものを極力スクリーンから排除したのではないでしょうか。それでも、パシッと決まって見えるのは、構図とトリミングの巧さだろうと思います。これがしっかりしていれば、コメディだろうが青春物語だろうが何でも撮れるんですね。

自分のことを「わし」と呼ぶ主演の夏帆ちゃんがとってもキュートです。原作を読んでいないのですが、天然コケッコーとは天然ボケの天然なんでしょうか?ふわふわして人のいい中学生を実に魅力的に演じています。中坊の恋愛なのに、後半だんだん切ないムードまっしぐらでオバサンは胸がキュンキュンしてしまいました。また、大沢くんという転校生を演じる岡田将生もいいですね。デビューした頃の市川隼人を思い出させます。最初は東京から来た嫌な奴かと思いましたがすぐにそよに恋してしまうなんて。まあ、まずはチューありきなんですが、それもまた、甘酸っぱいですね。

さて、「リアリズムの宿」でオシャレ過ぎると感じたくるりの音楽ですが、本作では見事にハマりました。また、佐藤浩市という有名俳優が出演していますが、後ろ姿だけ、ステテコの足元だけみたいなショットがあったりして、全く気負いを感じさせません。山下監督らしいゆるい一定のペースは常に保たれています。そして、ブラックテイストに満ち満ちた「松ヶ根乱射事件」の後がこの作品というその落差が何より愉快でたまりません。次はどんな1本になることやら、その予測の付かなさを大いに楽しみにしたいと思います。
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by galarina | 2008-01-09 23:58 | 映画(た行)

デジャヴ

2006年/アメリカ 監督/トニー・スコット

「最初から最後までクライマックス」

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予備知識は、ジェリー・ブラッカイマー製作とタイム・ウィンドウという言葉だけ。後はストーリーとか何も知らずに見たんですが、これが大正解。面白いエンタメが見たい、と言う人なら誰にでも太鼓判を押します。何も知らずにいればいるほど、楽しめる作品なので、まだ見ていない人は、以下のレビューは絶対に読まないように。

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全体の構成が実にお見事です。最初から最後まで飽きさせない良質のエンタメ映画はたくさんありますが、本作のすばらしさは、アクションだけで突っ走るのではない、展開のバリエーション。物語は、船の出航シーンで始まりますが、ドキュメンタリー風の映像で「ユナイテッド93」を思い出しました。やや間延びしたような雰囲気で一見退屈なシーン。これが、後になって生きてくるんですね。全く同じ映像なのに、プロローグの間延び感は吹っ飛んで、ハラハラドキドキ。観客の心理状況によって同じ映像を使い分けるなんて、思わず「巧いねえ」と声に出してしまったほど。

そして、プロローグののんびりムードを突き破る大爆発→頭のキレる一匹狼風捜査官の登場→タイム・ウィンドウなるハイテク機器による監視→4日という時空を越えたカーチェイス→タイムマシンに乗って過去戻り→愛する女性の大救出劇→ビックリ仰天のどんでん返しと、クライマックスは一体どこなんだ、と言うくらい、最初から最後まで「山場」の映画なんですね、これはすごい。緩急の緩と言えば、最初の出航シーンだけじゃないでしょうか。しかも、ラブストーリーとしてのテイストまで混合してしまうなんて恐れ入ります。「タイムウィンドウ」という秀逸のアイデアも、作品の後半は捨ててしまいますからね、この切り替えはすごいです。

常にタイムパラドクスが気になってしょうがない私は、本作においても「誰かちゃんと説明してくれ!」と叫びたい箇所がなかったわけではありません。特に、エンディング。また、ダグのタイムスリップは実は2度目だ、という意見があるんですけど、そういう新たな発見を聞かされると、さらに頭の中がこんぐらがって、どうしようもありません。でも、これだけの大作ですから、科学的な道理を逸脱しておいて知らん顔しているとは思えない。それなりに辻褄は合うんでしょう。そのために、いろんな伏線が張られているんだし。でも、私はこの伏線ばかり追いかける見方はしない方がいいと思う。少々の「なんで?」は置いておいて、「へ~!」「すげ~!」に徹しましょう。よくよく噛み砕いて見ればありえないことだらけですが、物語は全然浮いてなくてどっしりしてます。監督トニー・スコットとデンゼル・ワシントンの力量でしょう。
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by galarina | 2007-12-12 23:04 | 映画(た行)

どんてん生活

2003年/日本 監督/山下敦弘

「どこまで“狙って”やってるんだろう」

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裏ビデオのダビングという仕事(んなもん、仕事でも何でもねーよ!)をしている二人組のダラダラした日常をただ追いかけてるだけの映画。しかし、私は最初から最後まで、くっくっくっと肩ふるわせつつ笑いをかみ殺しながら、それなりに楽しく観賞していましました。しかも、途中で2、3度ぷーっと吹き出すほど笑ってしまいましたよ…。これ、ツボにはまる人とそうでない人、くっきり分かれちゃう作品でしょうねえ。

奇妙なリーゼントにヤンキー仕様の女物パンプスなど、ビジュアル的な面白さもあるのですが、やっぱりカットとカットのつなぎ方で笑いを誘うというのはセンスだよなーと実にくだらない映画ながら、感心することしかり。まさに今しかない!という瞬間に違うカットに切り替わる。これが1秒、2秒遅れると、たぶん面白くないんでしょう。

登場するのはどうしようもないダメ人間ですが、映画として彼らの心情に寄り添うわけでもなく、また冷ややかに見ているわけでもない感じです。ただ何もすることがなかったので、アパートの隣のヤツを毎日撮影してました、なんて言われてもおかしくないような雰囲気。でも、だからこそ出てくる面白味がある。ただ、一カ所、ビールの万引きで捕まってしまい、コンビニの店主をバットでめった打ちにして、それは妄想でした、チャンチャンというシーンがあるのですが、ここはムードがやや異質です。「松ヶ根」に繋がるようなブラックなテイストですね。

いずれにしろ、観客は登場人物に共感するとか、嬉しくなるとか悲しくなるとか、そういう感情的な起伏はほとんど与えられず、ただぼんやりと眺めているしかない。しかし、傍観するという行為の中でも、人間という生き物のおかしさ、情けなさというのは、じんわりと感じ取ることができるんですね。しかし、かと言って、本当にダラダラとフィルムを回せば映画ができあがるわけではありません。こういう作品は、やはり「間」と「つなぎ」が何よりも大事なんでしょう。物語のダラダラ感に反して、編集作業はすごく緻密だったりするのかなあ、それともセンスでさらっとこなしてしまうのか。とても興味深いです。
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by galarina | 2007-12-11 23:14 | 映画(た行)