「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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この胸いっぱいの愛を

2005年/日本 監督/塩田明彦

「がんじがらめなんでしょう」

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「黄泉がえり」がヒットしたことによって生じた「TBS絡み」「タイムスリップ絡み」「柴咲コウ絡み(主題歌ね)」…。いくつもの「○○絡み」に見舞われて、監督がホントはこうじゃないんだよなあ、と言うつぶやきさえ聞こえてきそうな作品です。

それにしても、塩田監督はえらくTBSに気に入られたものです。フジテレビが続々と映画部門で成功したことに対抗意識を燃やして囲い込みをしているんでしょう。このTBSというテレビ局は迷惑千万な「囲い込み」を実によくやります。顕著なのはドラマに出演する俳優陣で、常盤貴子と織田裕二は一時期TBSのドラマにしか出ていませんでした。この作品がどれほどヒットしたかは知りませんが、続けて「どろろ」の製作に乗り出す。これまた、塩田監督、柴咲コウは連投です。全然ジャンルは違いますが、亀田兄弟だって同じ。金を生む者は徹底的に独占して、広告塔代わりに飽きられるまでとことん消費するのがTBSのやり方。そんな方法で、どこまで「作り手の思い」が作品に反映されるのか、甚だ疑問ですね。まあ、フジのSMAPだって同じ事ですけど。

さて、作品に話を戻して。塩田監督の描く女性は、いつもぶっきらぼうです。前作「黄泉がえり」でも、可憐なイメージの竹内結子がずいぶんぶっきらぼうな言葉遣いをさせられていました。この、ぶっきらぼうな女性が、ふとしたことで見せる弱さ、可憐さが塩田作品の魅力。そういう点においては、本作のミムラも塩田作品らしい佇まいを見せています。ただ後半、重い病と言うベタな展開を迎えて、この気の強い和美ねーちゃんの強情さこそクローズアップすれ、女性としての魅力があまり伸びてこない。それが、いわゆる感動作としての盛り上がりを生みません。

やっぱり、感傷的な演出が少ないからでしょうね。最も印象深かったのは、入院中の和美にバイオリンの音色を聞かせてあげるシーン。ベタな演出ならば、大粒の涙を流す顔をアップで捉えて、嗚咽。なんてことになるんでしょうが、違います。和美は病室の角にうずくまり、こぶしで壁をどすっと叩きます。このカットは夕暮れ時の病室で、しかも和美はこけしみたいなロングおかっぱなもんで、ちょっと気味悪いんですよね。また、終盤和美のために用意したコンサートシーンでも、真意を知った和美はこの期に及んでヒロを睨み付けています。塩田監督は、何とかメルヘンテイストな仕上がりに抵抗しようとしている。そんな風に私は感じました。

「黄泉がえり」の場合は、主題歌の絡みもあり柴咲コウのコンサートと言うとびきりのクライマックスが用意されていた。しかし、本作の蛇足のエンディングは何ですか。あれは、ひどい。原作にどれくらい忠実なのか、未読なのでわかりませんが、二人に絞らず、もっと群像劇として仕上げれば良かった。クドカンのエピソードは、すごくいい。ヒロ以外の人物も、それぞれのやり残したことがクロスするようなクライマックスができれば良かったのになあ。残念です。この作品で最も得をしたのは、結婚相手を見つけたミムラでしょう。しかし、あんな一瞬の共演でなぜ結婚まで行き着いたのか、これがいちばんの不思議です。
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by galarina | 2008-08-23 17:06 | 映画(か行)