「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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鰐~ワニ~

1996年/韓国 監督/キム・ギドク

「原点を見るのは面白い」

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少々荒削りでも、はっとするカットの美しさがあれば許せてしまうことがあります。本作のそれは、ラストにありました。川底に沈んだソファに手錠をはめた二人が肩を並べて死んでゆくシーン。ギドクらしい美意識が如実に表れたラストだと思います。死んだ人間の金品を剥ぎ取るような人間性のかけらもない男ヨンペが、かくも美しい死に様を遂げることができたのは、自ら陵辱した女から赦しを得、愛に目覚めたからではないでしょうか。クリスチャンであるギドクらしい展開であるのはもちろんですが、より広い意味での「救い」を描いた作品と言えると思います。

正直、このラストシーンに至るまでは粗さばかりが目について、なかなかこの特異な世界に感情移入できませんでした。ヨンペの無軌道ぶりに対してそれほど嫌悪感を抱くこともなく、ぼんやりと眺めているような状況で。後の「悪い男」では、殴りたくなるほど主人公への嫌悪感を覚えましたので、やはり作品を作るごとに腕をあげたということなんでしょう。

橋の下の生活で、絵を描くシーンや彫像がアイテムとして使われており、今なお脈々と引き継がれるギドクの芸術精神がうかがえます。と、申しますか、近作「絶対の愛」でも彫刻は欠かせない存在ですから、逆に言うと変わってないない部分、表現の一貫性に触れることができた、とも言えます。とことん振り子を片方に振って、その対極にある揺るぎないものや美しいものを描き出す、そんなギドクスタイルも不変。荒削りだけど、芯の部分は今なお現在に引き継がれている。これぞデビュー作という佇まいの作品。
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by galarina | 2008-08-04 21:06 | 映画(わ行)