「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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告発のとき

2008年/アメリカ 監督/ポール・ハギス
<TOHOシネマズ二条にて観賞>

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戦争は、どんな人の心も悪魔に変えてしまう、というお話。誰が悪いと槍玉に挙げるわけでもなく、戦争の恐ろしさ、やるせなさをじっくりと見せる。そんなポール・ハギスの語り口の巧さに酔いしれました。

イラクから帰還した息子が我が家に帰ってこない。彼の行方を追ううちに、物語はサスペンス的な展開へと変貌する。犯人は誰かという謎、少しずつ顕わになる父の知らない息子の姿、そして、イラク戦場での恐ろしい現実。複数の物語が、それぞれ真実の姿を徐々に見せ始める。それぞれが重層的に絡み合いながら、実に奥深い作品に仕上がっている。あくまでも訴えかけるのは、個の心情で、国家や政府などと言うおためごかしなモチーフは一切登場しない。観賞後はずしんと心に響いてきました。

息子の壊れた携帯電話の修理を業者に依頼する父親。以来、父親のPCに修復した動画が少しずつ送られてくる。そのシーンが、真相究明の間にインサートされるのですが、これが非常にスリリングで効果的でした。息子の誠実さを信じて止まない父親。しかし、送られてくる戦場の動画は目を背けたくなるようなものばかり。息子に一体何があったのか。父親の気持ちを考えると本当につらくなります。しかし、この父親はあくまでも寡黙で何事にも動じない。多くを語らないトミー・リー・ジョーンズの演技がとても良かった。

物語の構成や語り口の饒舌さなど、ひとつの作品としてはとてもクオリティが高く、最後まで緊迫感を持って見られる一級品だと思います。ただ、ひとつ個人的に腑に落ちないことがあります。それは、母性の欠落です。この作品は、トミー・リー演じるハンク、つまり「父親」の背中を通して見せるということに徹しています。それは、作品の軸がぶれていない、ということにおいては、当たり前なのかも知れません。しかし、息子が行方不明だと言うのに、妻は家にひとりぼっち。まるで蚊帳の外です。戦争なんて、ない方がいいに決まっているのです。その未来を語る時に「母性」は欠かせないテーマだと私は思っています。また、刑事役のシャーリーズ・セロンは、シングルマザーと言う設定です。母親ひとりだけで息子を育てる、そんな彼女の後ろ姿に何かメッセージが隠されているのではないかとも期待したのですが、何も掴めませんでした。だから、なおさら寂しい、とても寂しいエンディングに感じられたのです。
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by galarina | 2008-07-22 15:44 | 映画(か行)