「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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セックスと嘘とビデオテープ

1989年/アメリカ 監督/スティーブン・ソダーバーグ

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デビュー作にしてカンヌでグランプリということも驚きでしたが、性と言うフィルターを通して自己と向き合う作品を若いアメリカ人監督が撮った。その事実がとても感慨深かったのを覚えています。面白い監督が出てきたもんだと思ってましたけど、まさか「オーシャンズ」のような娯楽大作を撮るようになるとは。

1989年の作品。もう20年近くも前なんですね。これまで何度も見ているのですが、久しぶりに再見。作品の訴求力は全く色褪せていませんでした。公開当時は、自分のセックス体験を告白する女性のビデオを撮る男、という設定の面白さで突出したように見えましたが、2008年の今見れば、自己解放という実に普遍的なテーマだなと思えます。しゃべる相手がカウンセラーではなく、通りすがりの男と言うだけのこと。流行りの言葉を使えば「癒し映画」とすら呼べるのではないでしょうか。

一方、人にではなく、「ビデオカメラ」だからこそ安心して自分自身を見せられるということ。これは、コミュニケーションの媒介物としての映像メディアの可能性を見事に捉えており、その先見性に驚きます。目の前にいる妻ではなく、ビデオの中の妻を見て、夫は妻を理解するのですから。もちろん、ビデオで語っていることが本当かどうかなんてわかりません。見栄を張っているかも知れないし、グレアムの気を引こうとしているのかも知れない。しかし、「告白」をすることで気持ちや態度がこうも変わってしまう人間心理は十分に伝わりますし、結局その告白を聞いている人間も、ただ耳を傾けているだけではなく、その告白者に対して影響を与えているのだ、と物語を着地させるところが素晴らしいと思います。話したい人間には話したい理由があり、聞いている人間には自分が聞き手に選ばれている理由があるということ。とても26歳で仕上げた脚本とは思えないですね。

物語を引っ張るのはジェームズ・スぺイダー の存在感です。面白いし、完成度の高い脚本ですけど、このグレアムと言う男の不可解さに観客が好奇心を持たないと、ただの趣味の悪い映画になりかねません。そこんところ、ジェームズ・スぺイダーは、グレアムという男が秘めている虚無的な雰囲気、得体の知れない生ぬるい感じを実にうまく演じている。この男になら、私だって告白してしまうかも知れません。
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by galarina | 2008-05-14 17:51 | 映画(さ行)