「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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2006年/日本 監督/万田邦敏

「すばらしい感動作。関西在住の方は、とにかく見て欲しい」
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あまりにベタなストーリーでありながら、映画としてのクオリティの高さに感動。神戸への想いも込めて、文句なく五つ星です。感動もので五つ星を付けたのは初めてかも知れません。それくらい、すばらしかった。

前半の震災シーンの描写がすごいのです。容赦なく建物が壊れていく様は恐怖を覚えます。でも、戦争や原爆映画などに見られる凄惨さとは、少し違います。例えば、倒壊した家屋の隙間から覗く手。これが本当にどきっとします。これで十分に地震の脅威、人々のつらさが痛いほど伝わります。おそらく、その時はもっともっとひどい状況だったに違いありません。でも、俳優陣が特殊メイクをして怪我人や病人としてふるまった時に、観客はどう受け取るでしょう。おそらく震災当事者の方々は直視できないでしょう。また、そこに嘘くささや作り物としての拒否反応が出ないでしょうか。アスファルトに敷かれたお布団。枕元に弔いのろうそく。こういうシンプルなワンカットが強烈な印象と、深いメッセージを放つのです。作り手は、大勢の被害者を出したこの震災を描くにあたって、非常に細やかな配慮をしている。しかし、地震の凄まじさは恐ろしいほどに伝わってくる。そこが、すごく巧いのです。

震災後、古市夫妻が口論をします。「おまえは泣いてばっかりやないか。ええかんげんにせい。」「お金のかかるゴルフを黙ってやらせてあげてたのに、こんなことになってもうどうしょーもない。」こういうやりとりが、めちゃめちゃリアルなんです。そこから、「3つの顔」という話になります。これが、またアホみたいにベタな例え話でね、いつもの私やったら「アホくさ」と一蹴してしまうような話なんです。ところが、もの凄く心に染みました。泣けました。どんな人も登場人物のセリフに素直に耳を傾けたくなる。それは前半部の震災シーンの凄みがあるからです。そして、主演が赤井英和だからではないでしょうか。

「どついたるねん」以降、俳優赤井英和が私は好きです。最近はすっかり太ってにやけたオッサンになってましたけど、やっぱりこの人は映画では希有な存在感を示します。忠夫がことあるごとに、「おおきに」「やったるでー」と前向きな関西弁を連発しますね。これが、中井貴一だったらどうでしょう。佐藤浩市だったらどうでしょう。きっと彼らなら「おおきに」のひと言に心を込めて感情豊かに言うはずです。でも、それは何遍も聞いてると、だんだん嫌味に感じないでしょうか。ぶっきらぼうで、実直で、なーんも考えてない赤井が連発する「おおきに」だからこそ、やけに心に染みます。赤井が持っているピュアな部分がこの作品のメッセージとぴったり合っているのです。映画が始まってすぐゴルフ場のロッカーシーン。デジタル時計が「5:46」を示し、赤井が「起きた!」と叫ぶ。赤井らしくて、すごいいいシーンです。また、忠夫を支える田中好子、薬師丸ひろ子。そして、消防団仲間の尾美としのりと光石研。脇を支える俳優陣もすばらしい演技を見せます。中でも田中好子は出色の出来映えだと思います。

空撮シーンがたくさん出てきます。復興後の神戸の街並み。長田の火災のニュース映像。鮮やかなグリーンがまぶしいゴルフ場。空撮の映像でこんなに感傷的な気持ちになったのは、初めてかも知れません。それほど、空撮が効果的です。また、冒頭の廊下でのシークエンスがラストに再び登場する。こういう映画としての巧いテクニックも随所に光ります。「星になった少年」で日本映画は感動作を作るのが下手と言いましたが、撤回します。これは、全ての人に見て欲しい感動作です。阪神大震災を忘れたらあかん。忘れかけてた当たり前のことを思いだし、しっかりと心に刻みました。
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by galarina | 2008-03-26 23:16 | 映画(あ行)