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「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ゾディアック

2006年/アメリカ 監督/デビッド・フィンチャー

「力強いビートに身をまかせる157分」
ゾディアック_c0076382_2222877.jpg


当初尺の長さに躊躇していたのだけど、その長さを全く感じさせない素晴らしい作品。ゾディアック事件を取り巻く人物達の焦燥と混乱を描いていますが、それだけで観客をぐいぐい引っ張るというのはとても難しいこと。というのも、この手の映画は、どうしても「犯人は誰か」に注目してしまうものだから。しかも、最初の事件が起きてから、ラストに至るまで非常に長い年月が流れている。なのに、ダラダラとした感じが全くしない。

例えば、いきなり「4年後…」なんてテロップが流れても緊張感が途絶えないのです。普通なら、「えっ、4年もすっ飛ばしちゃうワケ?」なんて、しらけた気持ちが起きるはず。でもね、それがないの。この作品には、ビートの刻みを聞いているような心地よさがあるんです。例えば、太鼓やドラムなどのお腹にずっしり来るパーカッションの音楽ってあるでしょう?ずっと一定のビートで力強くて、鮮やかで、いつまで聴いていても飽きない音楽。暗号をグレイスミスが解読するシーンなど「解けた!」という飛び抜けた演出もされていないし、ゾディアックが標的に忍び寄る様、特に赤ん坊を連れた女性に近づくシーンなども、じわりじわりと恐怖が忍び寄ってくる。その一定のリズム感が実に心地よくて。

ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr。三者三様、それぞれの人生が狂い始める様を見事に演じています。ある意味、この3人の役どころに誰か大物スターが入り込んでいたら、非常にバランスが悪くなったでしょう。ゾディアックというシンボルを中心にして、すばらしいトライアングルを形成しています。それぞれの運命の歯車は決して良い方向には回らない。図らずして悲劇のレールに乗ってしまったことを、中盤辺りですでに観客は予期し始めます。それでも、我々は固唾を呑んでその行く末を見守らねばならない、そんな使命感すら感じさせられました。犯人が捕まろうが死のうが、そんなことは途中でどうでもよくなり、ラストまで緊張感と共にゾディアックに翻弄される3人の男達の生き様を食い入るように眺めてしまったのです。
by galarina | 2008-01-23 22:19 | 映画(さ行)