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「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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リアリズムの宿

2004年/日本 監督/山下敦弘

「ダメ男三部作、完結編」
リアリズムの宿_c0076382_17273671.jpg


しっかり構図をキメて撮ってるなあ、というのが第一印象。横長スクリーンを効果的に使う基本形、とも言えるべき構図ばかりではないでしょうか。このキメキメであまりにシンプルな構図は見ていて気持ちいいです。もし、構図がゆるゆるだったら、物語のすさまじい間延び感と相まって、退屈で退屈でたまらない作品になっていたでしょう。構図が作品全体のテンポやリズム感の役割を果たしています。

これまでの作品同様、本作でも山下流ボケが連発されます。「ばかのハコ船」で大勢を笑わせようとは思ってないと書きましたけど、本作ではさらに「オチ」をつけようと思ってないんじゃないか、とまで思わされます。私は生粋の大阪人なので、ボケには必ずツッこむ、ふったネタは必ず落とす、という流れが染みついているんですが、そういう匂いが全然しないの。もちろん、見ていてプッと笑ってしまうカットは、結果的には「オチてる」という事なんでしょうけど、作り手側が「おとしてやろう」とはたぶん思ってない。その、のびのび感が山下作品の味なんですね。これは、おそらく共同脚本の向井康介のセンスも多分にあるんじゃないでしょうか。

ダメ男三部作の完結編ですが、男たちに負けてないダメ宿っぷりが秀逸です。最後の宿なんて、風呂場のシーンで本当に気分が悪くなりました。カビの生えたタイル、吐瀉物の溜まった排水溝、椅子の上の入れ歯…。「どんてん生活」の部屋もそうでしたが、ありえな~い!的汚い描写がうまいです。ただ、こういうインパクトのあるシチュエーションがありながら、作品全体としてはパワーダウンした感じが否めません。それは、おそらく前作「ばかのハコ船」の完成度がとても高かったからでしょう。また、突然旅に加わる「あっちゃん」という女性がどうも私には受け入れられなくて。旅の途中でかわいい女の子に出会うというシチュエーションは、男性の方がしっぽり来るのかも知れないです。でも、裸で浜辺を走ってくるロングショットはとてもいいですよ。

さて、音楽をくるりが担当。古い作品から順番に見ていくと、むしろ楽曲の完成度が裏目に出たかな。音楽シーン全体を見渡すとくるりって抜けた感じが心地よいバンドですが、山下作品にはオシャレ過ぎる感じもします。長塚圭史という有名人も加入しているし、このあたりから山下作品がメジャー化していくんですね。
by galarina | 2008-01-08 23:16 | 映画(ら行)