「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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悪魔の手毬歌

1977年/日本 監督/市川崑

「磯川警部にもっとスポットを当てた方が良かった」

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角川で大ヒットした作品をを東宝に移しての2作目。市川+石坂版では、最高傑作と言われることが多いようですが、私は獄門島の方が好きです。その評価の高さは、若山富三郎が演じる磯川警部と岸恵子が演じる青池リカの悲恋にあるようで、確かに原作よりはうまく料理できていると思います。ただ、作品全体を眺めると磯川警部の存在感は決して大きくないんですね。その理由は、私は加藤武演じる立花警部の存在感のせいだと思います。一つの事件にふたりの警部が共存しているんです。これ、原作は違うだろうと思ってました。「よーし、わかった!」のセリフを言わせるために無理矢理キャスティングしたんだろうと。そしたら、原作もそうだったんです。驚きました。ただ原作の立花警部はもっと地味で名台詞も言わないし、薬も持ち歩いてません。

この年は続けて「獄門島」も発表しており、加藤武はそっちも出演しています。ですから、いっそのこと「悪魔」は磯川警部に絞っても良かったんじゃないでしょうか。そしたら、リカとの悲恋ももっとクローズアップされたのに。元々原作の金田一シリーズにおいて磯川警部は、どのキャラよりも金田一と親交が深く、原作ファンには思い入れの深い存在。でも、加藤武というキャラがそのポジションを奪ってしまってるんですからね。本シリーズにおける笑いの要素というのは、とても重要なのはわかるのだけど、加藤武が出ずとも、大滝修治やら三木のり平がその役割を十分果たせています。本作の大滝修治は最高です。それから、白石加代子もすごいです。気味が悪くてぞわ~と鳥肌が立ちそうになります。

そして、市川作品にも数多く出演している岸恵子。さすがに市川監督は美しく撮っています。しかも、なぜか市川監督はリカというキャラクターに「おっちょこちょいで忘れっぽい女」という肉付けを行っています。そのことによって、リカは終始お茶目で明るくて生き生きとした女に見え、一転して後半は犯人の抱える哀切へと繋げていく。原作にはない、登場人物の新たな一面を加えるというのが市川監督は実にうまい。それは、原作を変えてオリジナリティを出したいということではなく、原作を深く読み理解しているからこそできることだと思います。

市川監督が金田一耕助を語る時に「天使」とか「神の視点」のようなことを話しているのを聞いたことがあります。なるほど金田一を前にしての犯人の告白は懺悔のようでもあります。原作でリカは放火をした後、沼に転げ落ちて事故死するのですが、映画ではしっかり懺悔のシーンが用意されています。そして、ラスト。「あなたはリカさんを愛していたのですね」という言葉が、走りゆく機関車の音にかき消されてゆく。ここはシリーズ中最も印象に残る名シーンではないでしょうか。
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by galarina | 2007-12-16 23:48 | 映画(あ行)