「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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原作/獄門島

発表年/昭和21年
舞台/昭和21年9月 瀬戸内海・獄門島


「エンターテイメントと和文化の見事な融合」

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<ネタバレです>
本作は「本陣殺人事件」でデビューした金田一の2つめの事件(設定は昭和21年9月)として、シリーズの中ではとても重要なポジションを占める作品なのですね。昭和12年に「本陣殺人事件」を解決した金田一が戦争から帰ってきて、磯川警部と感激の再会をすること、依頼を頼まれたのが復員船の中ということなど、戦争のもの悲しさをそこかしこで感じさせます。

しかしながら、一方繰り広げられる殺人事件は、実に大胆でセンセーショナル。まずその一つは「見立て殺人」。美人三姉妹は俳句に見立てて殺される。しかも、梅の木に吊されたり、釣り鐘の中に押し込められたりと、ビジュアル的な刺激をそそります。奇妙な殺され方に島の人間は頭を抱えますが、その理由が俳句の見立てとわかった時には、不謹慎ながら高揚感を覚えてしまう。

そして、二つめは「トリック」。3人の殺人それぞれに巧妙なトリックが隠されているわけですが、1番目の闇夜を利用したトリックと3番目の猫の鈴を利用したトリックもさることながら、2番目の「釣り鐘」トリックが秀逸。当時横溝正史が書きながら映画化を考えていたとは思えないのですが、これほど映像向きなトリックはないでしょう。張り子の鐘がまっぷたつに割れて、中から本物の釣り鐘が出てくるなんて、まるで奇術のようなトリック。私が作家なら、これで映画化マチガイなし!とほくそ笑んでしまいそうです。

そして、三つめは、犯人が3人とも異なるという結末。これ、映画と違うものですから、ずいぶん驚きました。3人を殺人に駆り立てたのは摩訶不思議な偶然を呼び寄せた嘉右衛門の怨念という辺りは、横溝正史らしい筋書き。3人の殺人者の中心人物である和尚が「あの三人娘は、そもそも、殺して惜しいような人間でもなかったでな。あっはっは。」と豪快に笑い、世の中を超越したような面持ちで金田一の前に対峙するラストの謎解きシーンは、何度読んでも面白い。さあ、金田一さん、謎を解いてもらおうやないか、と居直る和尚の前で萎縮する金田一の様子がこれまた目に浮かぶよう。

瀬戸内海の小島を舞台に繰り広げられる本作は、殺人の小道具や俳句の導入など、いわゆる日本古来の要素が巧みに取り入れられた点において、世間に横溝ワールドが決定づけられたのは間違いないでしょう。しかも、海賊が往来したという獄門島周辺の歴史が平安から現代に至るまで語られる箇所は、その他の作品同様、知られざる日本の歴史散策をしている気分にさせてくれる。母の捻れた愛という情念で突っ走る「犬神家」とは違って、「獄門島」は舞台設定、殺人方法、オチに至るまで実に隙のない、非常に完成度の高い作品だと感じました。
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by galarina | 2007-12-02 23:04 | 映画の原作