「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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豚と軍艦

1961年/日本 監督/今村昌平

「豚の生き様、豚の死に様」

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昭和35年、米海軍基地として賑わう横須賀が舞台。とりあえず、手っ取り早く稼ぐにゃ、男はヤクザ、女は娼婦。もう、みんながみんなどうしようもないのよね。だけども、体張って生きていくしかないんだ、この時代は。人間くさい日森組のヤクザたちのキャラが面白い。病気持ちのアニキ丹波哲郎、仕切り屋の大坂志郎、威勢のいい加藤武、臆病者の小沢昭二、そしてパシリの長門裕之。それぞれのキャラクターが実に生き生きしていて、やってることは最低なんだけど、どうにもこうにも微笑ましく見える。戦後を生き抜くはみ出し者に対する今村監督の愛情がスクリーンからあふれてくる。

そんなどうしようもない男どもが基地の残飯をタダでもらい受けて始めたのが養豚業。人間界のブタどもが本物の豚を育てるわけですな。そして、圧巻はラストシーンの街中を駆け回る豚、豚、豚の群れ。生きるために走る。見てくれは悪くても、鳴き声は汚くとも、街を走る。その滑稽だけど、バイタリティーあふれる姿が、ヤクザの生き様と見事にオーバーラップする。本物の豚どもに追いかけられ、踏みつぶされ、逃げまどう人間のブタども。ヤクザの世界からようやく足を洗う決心した欣太(長門裕之)だったが、彼の行き着いた場所は…。

ドブ板通りの人間どもを舐めるように捉えるカメラワークに躍動感あふれる演出、俯瞰のショットもそこかしこで効いている。海兵たちに弄ばれる春子をベッドの上から眺めたショット、突っ伏した欣太の最期を捉えたショット、そして、ラストシークエンス。カメラはむらがる娼婦たちをすり抜け横須賀の街を去る春子の後ろ姿をとらえながら、どんどん引いていき上空から去りゆく電車をとらえる、鮮やかなラスト。

さて、ヤクザの面々も面白いけど、ヒロインを演じる吉村実子、この映画がデビュー作とは思えない堂々たる演技。続いての名作「にっぽん昆虫記」にも出演。おかあちゃんの愛人を寝取るという、何とも逞しい田舎娘を演じてます。みんなに「べっぴんさんだねぇ」と言われてますけど、正直…。いえいえ、当時はこの逞しさこそ、女の美学だったのかも知れません。
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by galarina | 2007-12-01 23:28 | 映画(は行)