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「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ヘアスプレー

2007年/アメリカ 監督/アダム・シャンクマン
<梅田ピカデリーにて鑑賞>

ヘアスプレー_c0076382_1814357.jpg


見終わってこんなにポジティブな気持ちになった作品は久しぶり!まあ、トレーシーのなりふり構わぬ一直線な行動は、人種問題という側面から見れば、なんなりと突っ込める部分はあるのだけれど、それをこの作品でとやかく言うのは野暮というもの。正直で明るくていつも前向きなトレーシーに、みんな乗っかっちゃって、楽しく弾けましょう。

「ボーダーを超える」ということがテーマでありますが、「コーニー・コリンズ・ショー」のダンスシーンで、まさに白人と黒人の間にロープが引かれており(これまた、ものすごいあからさまでビックリするんだけど)、ここをトレーシーがいとも簡単に黒人の男の子と手を取り合って超えていってしまう。このわかりやすさがいいのよね。観客の性別や年代に関わらず、全ての人がトレーシーがやろうとしていることに共感できるようになっている。もちろん、音楽のパワフルさも手伝って、2時間があっという間。

実は、ワタクシこの作品何の事前情報も持たずに見に行ったもんで、音楽はもっと60年代の白人音楽が中心だと思ってたのね。そしたら、次から次へと繰り出されるブラック・ミュージックに踊り出したくなりました。しかも、あまりにもあからさまな黒人差別を目の当たりにして、こういうことがつい40年前まであったんだな、と思うと、音楽の弾けっぷりとは相反して妙にしんみりしてしまうことも。例えば劇中、黒人を呼ぶときはほとんど「ニグロ」という言葉が使われていて、それはおそらく当時としては当たり前だったんだろうけど、今ではその言葉は差別語であるわけで、そういう「当たり前な差別」がたくさん出てくる。

さて、1962年代のボルチモアが舞台。奇しくも私が夢中になった「ドリーム・ガールズ」と全く同じ年代。なので、「ドリーム・ガールズ」と表裏の存在としても本作は楽しめると思います。「ドリーム・ガールズ」は、出演者は全て黒人。「白人ウケ」するための音楽作りが対立の火種になっていて、黒人音楽は白人にパクられている。一方、「ヘアスプレー」は、白人トレーシーが黒人のダンスを取り入れようとするし、白人3人娘の歌を黒人3人娘がカヴァーして、プロデューサーベルマが抗議する。

いずれも白人と黒人のカルチャーが交錯しようとする摩擦を描いているんだけども、誰の視点で語るかによって、こうも浮き彫りになる問題は違うものかと興味深い。また、デトロイトとボルチモアという舞台の違いももちろんあるわけで、同じ年なのに起きていることがこうも違うなんて、アメリカってつくづく広い国だなと思った。

女装のトラボルタは、最後にオイシイところを持っていっちゃって、なかなか引き受けなかったというミュージカルの仕事をやった甲斐がありました。主役のニッキー・ブロンスキーは、まあダンスがパワフルだし、歌も上手いし、ジェニファー・ハドソン同様、オーディションでこういう人材がザックザックと出てくるアメリカってすげえや、と素直に感心したのであります。
by galarina | 2007-10-30 23:13 | 映画(は行)