「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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題名のない子守歌

2007年/イタリア 監督/ジュゼッペ・トルナトーレ
<京都シネマにて鑑賞>

「子を持つ全ての母親に捧げる」
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「ニューシネマ・パラダイス」のほろりと泣かせるイメージがどうしても強いジュゼッペ・トルナトーレですが、本作はサスペンスタッチのかなり硬派な作品。セックスシーンの女性をいたぶるような描写もかなり強烈です。実は前作「マレーナ」でも、そういうシーンはあったので、我々はあまりにも「ニューシネマ」のイメージを引っ張りすぎているのかも知れないです。

ウクライナからやってきたひとりの女性が、イタリアの街で家政婦として働き始める。彼女が何としてもその家で働きたい理由は、一家の娘の存在にあるようなのだが…

前半1時間ほどは、なぜ主人公がウクライナから逃れて来たのか、そして、その娘への異様な執着はどこにあるのかがサスペンスタッチで描かれてゆきます。時折挿入される映像で、どうやら彼女がウクライナでは売春まがいのことを強要されていたことがわかります。そしてフラッシュバックのように挿入されるシーンから彼女がただの売春婦ではないことがうかがえる。もちろん、その真相はここでは書きませんが、そのあまりにもつらい現実に全ての女性は怒りを禁じ得ないのではないでしょうか。

ところが本作、音楽があまりにもうるさい。エンニオ・モリコーネの音楽が良くないというわけではないのですけど、あまりにも全てのシーンに音楽がくっついているのがかなり余計。前半のサスペンス部分はまだ許せるとしても、後半実にシリアスなテーマになっていくくだりは、もう音楽はいらないからじっくり考えさせてくれとすら。それが、とにかく残念な点。

また、フラッシュバックの手法をかなり引っ張るんですねえ。私としてはもう少し前倒しにいろんなことを早く見せるべきだったように思う。主人公イレーナが前半取る行動は真相を知らされていないだけに、観客はなかなか感情移入できない。なるほど、それで彼女はそこまでやるのか、という理由がわかったら、後は彼女と共にスクリーンの中で生きたかった。そうしなければ、やたらとどぎつい虐待シーンばかりが脳裏に焼き付いて離れないからです。もう少し、手法にこだわらずにそのまま見せて欲しかった。

ネタバレになるので、詳しく書けないのがつらいところですが、イレーナの素性が明らかになる部分は、社会的にも実に重い問題です。今でもこんなことが堂々と行われているのだとしたら、悲しくてやりきれません。だからこそ映画として、きちんと告発し、そのいきさつをじっくりと観客に考えさせる余地を与えて欲しい。えっ、そうなの?どういうこと?と思っている間に、矢継ぎ早にエンドロールまで走っていってしまう。そういう性急さが実にもったいないのです。

さて、主人公を演じるロシアの女優クセニア・ラパポルトの体当たりの演技には拍手。ウクライナ時代の彼女と現在の彼女のギャップがあまりにも大きくて、こんなにも人は変わるものかな、と。非常に美人だし、スタイルもすばらしい。しかし、敢えてその美しさを封印して演じたところにイレーナという女性が背負ってしまったどうしようもない暗い運命を感じました。

それにしても、普通に結婚して、普通に子供を産み、普通に自分の手で我が子を育てている今の生活がいかに幸福なことなのかを痛感させられました。
全ての女性に幸福を、と願わずにはいられません。
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by galarina | 2007-10-08 23:41 | 映画(た行)