「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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おかえり

1995年/日本 監督/篠崎誠

「役者の存在感が際だつ即興演出」
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だんだん精神に異常をきたす妻とそれを見守る夫の物語。北野組ではヤクザ役の多い寺島進が本作では一転して物静かな夫役を好演している。

一緒に住んでいるパートナーが精神的に病んでいく、それを目の当たりにした時、人はどのような行動を取るだろうか。なぜ彼女はおかしくなったのか。作品中では語られることはない。普通なら夫はその原因を突き止めようとするだろう。ましてや夫婦ふたりきりの暮らしなら、原因は自分にあるのではないか、とパニックになるかも知れない。しかし、この作品の夫が最後に選んだ行動。それは、ただ黙って彼女に寄り添うこと。

本作は妻がおかしくなる様子を含め、実に淡々と物語が進む。場面も薄暗いマンションの一室がほとんどなので、つい寝てしまいそうになる、と言ってもおかしくない程。でもその静けさは全て、ラストシーンのためにあると言ってもいいのかも知れない。ふたりでキッチンの壁にもたれて座り込み、ただ黙って肩を寄り添いあうラストシーン。とてもとても長いワンカット。それは、いつも君のそばにいる、と言う夫の決意の現れであるのだが、その何と静かで穏やかなこと。ゆるやかに顔を照らし始める窓からの日差しがあたたかく二人を包み込むよう。

カメラは、実に長い時間夫婦ふたりの顔をとらえて離さない。その間、監督はどう演技指導したのだろう。目の前にいる二人の演技は、リアルというよりも、「素」のまんまという感じ。おそらく即興的な演出ではないだろうか。本作は、物語そのものに起伏はないけれど、全編に渡って見受けられる即興性がこの先どうなるのか見えない、という不安感を誘う。その綱渡り的な雰囲気が妻が精神的に不安定になっていく、というストーリーとうまくリンクしている。ものすごく地味な映画であるが、やってることは結構挑戦的な一本ではないかと思う。
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by galarina | 2007-10-02 23:55 | 映画(あ行)