「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ボウリング・フォー・コロンバイン

2002年/アメリカ 監督/マイケル・ムーア

「着眼点、取材方法、テーマの帰結のさせ方、全てが★★★★★」
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ムーア作品で感心するのは、視点の広げ方がうまいと言うこと。アメリカを震撼させた少年犯罪を中心点として、その要因はどこにあるのか問題点を直線的ではなく、放射状に広げていく。その引き出しの広さと着想の豊かさを見ていると、日本のワイドショーで見られるゲームが悪い、ゴスロリが悪いと言った、短絡的な分析がほとほとアホらしく見える。

で、その理知的な分析を裏付けるのが突撃取材、というこの落差のコンビネーションが映画としてのダイナミズムを生み出している。「華氏911」でも書いたけど、ムーア作品にはムーアらしいやや先走った思い入れもそこかしこに見られる。が、監督の思い入れがないと映画とは呼べんだろう、と思うのだ。ゆえに、本作を見て「こんなのにダマされるな!」と言う人がいてもいい。先日見た「不都合な真実」があまりにもお利口に見えてつまらない理由がここにある。

歴史、メディア、福祉、経済…とめまぐるしく論点が提示され、最終的にたどり着くのは、「それでも我々は世の中を変えることができる」という力強いメッセージだ。少年が同級生を無差別に射殺するというこの上ない悲しい事件が発端でありながらも、Kマートに銃弾の販売を停止させるという具体的な成果=行動することの大切さに帰結させていく。それは、かすかな希望でもある。世の中を憂うことは誰にでもできるが、希望を見せることはそうそうできることではない。Kマートの結果は偶発的かも知れないが、「取材する」という行為を通じて「希望を示す」というのは、メディアに関わる人間全ての願望ではないか。ムーアは、それをこの作品の中で体現している。そこが、私の五つ星の一番大きな理由。

さて、ムーアの取材対象としてチャールトン・ヘストンもその開き直りぶりがインパクト大だが、私が最も印象に残ったのは、マリリン・マンソン。彼がムーアに漏らした「恐怖と消費のキャンペーン」という言葉は、この問題の本質を捉えるのにこそ最もふさわしい。これほど的を得たキャッチコピーが、少年犯罪のスケープゴートとされている張本人の口から出たこと自体驚きだし、このインタビューは過激な歌手マリリン・マンソンが実は思慮深く、賢い人物であることを顕わにしている。着眼点にも、取材映像にも、新たな発見が本当にたくさん詰まっていて、何度見ても唸らされる。
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by galarina | 2007-09-26 23:21 | 映画(は行)