「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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インランド・エンパイア

2006年/アメリカ 監督/デヴィッド・リンチ
<京都シネマにて鑑賞>

「抜け出せぬ迷宮」
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リンチと言えば「倒錯」の世界なんだけども、今回は100%「迷宮」。見終わった瞬間は、何が何だかさっぱりわからない。1週間ほど前に見に行って、なんとか思考をまとめようかと思ったけど、できそうにない。次にもう一度DVDで見たら、きちんと筋を通せるかも知れません。ただし、3時間ものこの映画、もう一回見るかなあ(笑)。

物語は
1.女優ニッキーの世界
2.ニッキーが出演する映画『暗い明日の空の上で』の世界
3.『暗い明日の空の上で』内の映画『47』のポーランドの世界
4.ロスト・ガールの世界
5.謎のウサギ人間の世界

と5つの世界が交錯する。それぞれの世界を繋ぐ「扉」は作品内に「しっかりと」描かれている。これがクセもの。扉を開けると別の世界に行くという直接的なものから、電話のベルが鳴って受話器をあげると別の世界に切り替わる、映像がテレビ画面に吸い込まれて別の世界に切り替わるなど、明らかに5つの世界には「接点」があるという構造になっている。

映画館で見終わった時は全く「?」だったが、こうやって書き出して見ると、1と2と3はいわゆる入れ子構造の3世界であり、4と5は明らかに異質だとわかる。そして、大いなるヒントは「ロスト・ガール」という言葉ではないだろうか。実は本編中「ロスト・ガール」という言葉は一切出てこない。これは、私は公式ホームページで知った。(パンフレットにはもっと詳しく書いてあるんだろうなあ。買ってないのでわからん)

ロスト・ガール。迷子の女性、死んだ女性、破滅した女性…。日本語にするとどうなるかは定かではないが、いずれにしても、彼女がテレビ画面をのぞき込んで涙を流していること、そして、『暗い明日の空の上で』(または『47』)内で演じているローラ・ダーンがテレビ画面から飛び出してきて最後にロスト・ガールと抱き合うシーンがあることを考慮すれば、ロスト・ガールのいる世界は、1.2.3の入れ子世界よりも上部、または包括するレベルにあるのだと思う。そうなると、5のウサギの世界は何か?これは、ロストガールと1.2.3の世界を繋ぐ場所、または、1と2や3を繋ぐ場所にあるのではないか。いずれにしても、どこかとどこかの世界の中間に存在しているような気がする。

まあ、何となく繋げてみて思うのは、1.2.3の世界は、ロスト・ガールが作りだしたものなのかな?ということ。しかもタイトルは「内なる帝国」。誰の内なる帝国を描いたものか?やはり、ロスト・ガールと考えるのが妥当だろう。ただ、180分という長い時間の中でロスト・ガールの世界の描写が実に少ない。果たして全てを牛耳っているのが、ロスト・ガールと断定していいものか悩んでしまう。しかも、関係性がわかったとて、それぞれの世界の意味付けが全くできない。これはとにかく、もう1回観るしかなさそうです。


さて、オープニングとエンディングがすごくカッコイイんだよね。オープニングのレコード盤が回る映像に別の映像が重なって、重低音のクールな音楽が流れてきた時にはゾクゾク~としちゃった。それから、「ツイン・ピークス」でローラの母を演じていたグレイス・ザブリスキーが出ているんだけど、あいかわらずの怪演ぶり。そして、裕木奈江のあどけない顔から発せられる下品な言葉のオンパレードで構成される長台詞。ふたりとも訛りのきつい下手な英語をしゃべっていて、おそらくそれはリンチの指示なんだろう。居心地の悪さが醸し出すむずがゆい感じがまさにリンチ・ワールドといった感じ。

で、圧巻はローラ・ダーンのキレっぷり。よくもまあ、ここまで狂気に満ちたヒロインを演じましたよ。あっぱれ。しかも、リンチはちっとも美人になんか撮ってくれないもんね。ひとり3役ですからワケわかんなくなってたと思うけど、まさにそのわかんない感じをリンチは引き出したかったのでしょう。演技そのものが混乱に満ちていて、それがそのまま主人公ニッキーの混乱ぶりを表していた。

とにかく女優陣のアップが怖い。今回、リンチは全編SONY PD-150と呼ばれる小型のデジタルカメラで撮影したようで、どこまでも女優の顔に近づいていきます。恐れ、おののき、泣く女の顔が次から次へと現れ、観客を不安と混迷の世界に引きずり込んでいく。さながら、いったん嵌ると抜けきれない底なし沼のような作品だ。
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by galarina | 2007-08-11 23:21 | 映画(あ行)