「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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トーク・トゥ・ハー

2002年/スペイン 監督/ペドロ・アルモドヴァル

「キワモノを美に昇華させたアルモドバルの力量」
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これは、アルモドバル作品で一番好きかも知れない。彼独特の美意識と倒錯の世界がてんこ盛りで。ビナ・バウシュのダンスシーンやカエターノ・ヴェローゾのライブシーンなど物語を彩る芸術もすばらしいし。特に私は恋人の死を嘆く、カエターノの繊細で壊れてしまいそうな優しい歌声にノックアウト。劇中のライブでこれほどステキなシーンってそうそうない。

それから、色鮮やかな映像。アルモドバル監督は、元々色遣いがすごく上手だけど、やっぱりスペインという国そのものが持っている色彩感覚があるからこそできる技なんだろうなと思う。元々スペインの街並みや建物に深みのある黄色と赤がふんだんに取り込まれているのよね。例えば、病院の廊下でマルコがぼんやりと座っているというシーンでも、壁の色が黄色でソファが赤茶。壁とソファの境界線をスクリーンのセンターに持ってきてマルコを左側に座らせる。そのトリミングの仕方がとても上手で色のバランスが絶妙。

闘牛士の衣装もキレイだし、寝たきりのアリシアが身に付けるバレエの衣装のようなシルクのスリップもキレイ。もちろん、アリシアの裸身も。特に豊かな乳房をとらえるショットは、女の私でも息を呑んじゃう。とにかく美しいものが次から次へと現れる。その「美しいもの」たちと共に映し出されるからこそ、ベニグノの愛が純愛に見える。もちろん、ベニグノの行為に嫌悪を持つ人もいるだろうけど、結局この作品はそれを論じたり判断するために作っているのではないんだと思う。

タイトルにもあるように「語りかけること」。相手が何の反応も示さず、聞いてくれているのかもわからない。それでも静かに語り続けることの意味深さを伝えているんだと思う。ビナ・バウシュの前衛舞踏も観客の心に語りかけるようなダンスだったし、リディアに語りかけることのできないマルコは結局彼女と別れた。また、アリシアがマルコに声をかけることで何かが生まれる予感が。そして、マルコは「語ることは簡単さ」としめくくる。

囁くように優しく語りかけること、ひそやかに誰かの心をノックすることで生まれる様々な心模様をアルモドバルらしい映像美で見せる。美しさ、作品の深み、先を知りたくなる展開。全てが秀逸。本来キワモノと見なされるアルモドバルの作風がしっかり「美」に昇華されているのがすばらしいと思う。
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by galarina | 2007-07-05 22:59 | 映画(た行)