「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ヨコハマメリー

2005年/日本 監督/中村高寛

「戦後を生き抜いたある娼婦の物語」
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年老いてもなお、横浜の街に立ち続けた孤高の娼婦、ヨコハマメリーの生涯を彼女を取り巻く人物たちのインタビューで構成したドキュメンタリー映画。メリーさん本人が語るシーンは一切ない。しかし、他の人がヨコハマメリーを語りその人物像を顕わにしていくことで戦後の日本がリアルに我々に迫る。

私は始まって10分もしないうちに泣けてきた。何かが起きたわけでもないのに、ただそこにメリーさんが立っていたというビルの一角のショットでもう泣けてきた。歌舞伎役者のように白塗りのメイクをし、貴族のような白いレースのドレスに身を包んだメリーさんは、一体どんな思いでここに立ち続けたのだろうか。

メリーさんが他の娼婦たちと明らかに違うのはその気位の高さだった。メリーさんと呼ばれる前の呼び名は「皇后陛下」。やくざや元締めとは一切関わりをもたない「立ちんぼ」だった娼婦のあだ名が「皇后陛下」っだって言うんだから、いかにメリーさんが常人とは異なる雰囲気を醸し出していたかよくわかる。

また、横浜界隈で開かれていた芝居やコンサートにはきちんとチケットを買って見に来たり、店の前に立つことを許してくれたオーナーにお歳暮を贈ったりと、メリーさんはもしかして本当に身分の高い人だったのではないか、という様々な想像がうずまく。しかしメリーさんの昔を知らない若者たちは、その奇妙な容貌から、白いお化けなど化け物扱いするような目で見る者もいた。メリーさんの存在は都市伝説のようになっていったのだ。

そんなメリーさんが突然横浜の街から消えたのが1995年。メリーさんは一体どこへ行ってしまったのだろうか。彼女を知る証言者が現れてくるにつれ、期待と不安が高まっていく。果たしてメリーさんは、どうなったのか。

私はこの映画を多くの人に見て欲しいと思うので、ネタバレになるようなことを書くのはやめようと思う。伝説の娼婦はどうなったのか、ぜひ自分で確かめて欲しい。

私が感じたこと。それは、メリーさんは「ヨコハマメリー」を演じ続けたのだ、ということ。戦後の混乱期に生き抜くために選んだ職業、それがヨコハマメリーであった。彼女はその仕事に誇りを持っていた。自分のやり方で私は私の人生を生き抜いてきた、ただそれだけなのだ。メリーさんを影で支え続けた永登元次郎さんが歌う「マイ・ウェイ」の歌詞がメリーさんの人生とオーバーラップする。

男は戦争に行って死に、残された女は体を売って生き抜いた。メリーさんという女性に迫れば迫るほど、私の中の「女性性」も剥き出しにされて、痛かった。なんとつらい、しかしなんと気高い人生だったろうか。女とは、生きるとは、そして誇りとは何かを考えさせる珠玉のドキュメンタリー。ぜひ見てください。
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by galarina | 2007-02-28 20:02 | 映画(や行)