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by galarina
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ヴァージン・スーサイズ

1999年/アメリカ 監督/ソフィア・コッポラ

「美しき花々は枯れることなく突然消えた」
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ソフィア・コッポラの初監督作品。1970年代のリスボン家の5姉妹の不可思議な自殺へのプロセスを隣に住む兄弟が語り手となって描く異色作。

ティーンエージャーの揺れ動く心理、刹那的な生き方、耽美や怠惰への憧憬など、処女作で扱ったモチーフはそのまま現在公開中の「マリー・アントワネット」に通じている。5人の美人姉妹の末娘が風呂場で手首を切ったことがきっかけで「死」への憧憬は、またたくまに他の4人の少女たちに伝染する。10代の少女特有の情緒不安定な心理を描いた映画はたくさんあり、近年の日本映画なら援助交際を扱った作品などが思い浮かぶ。

しかし、今作を見て私の脳裏によぎったのは、日本の耽美派少女漫画の世界である。こりゃあ、萩尾望都か竹宮恵子じゃないのか、と思った。娘を愛するあまり、家から一歩も出させない厳格な両親というキャラクターなんぞ、まさにそんな感じ。金髪の美少女が5人も揃って庭駆け回る様子もしかり。というわけで、ソフィア・コッポラは日本の少女漫画オタクなんでは?と思わず勘ぐってしまうのだ。「マリー・アントワネット」を映画化したあたりからして。

さて、4女を演じるのがキルステン・ダンスト(昔はキルスティンって言ってたのにいつからキルステンなの?)。決して端正な美人顔ではないキルステンが姉妹の中では一番奔放な役どころで、自分の中の鬱屈を何とか解消したい少女の心理を好演している。非常に印象深い演技で、ソフィア・コッポラにとってお気に入りの女優になったのもうなずける。

5人姉妹の自殺の理由を映画の中に求める人は、映画を楽しめないのは当たり前だろう。だって確たる理由なんてないのだもの。悲しいことに昨今いじめによる自殺を報道することが、また別の自殺をうながすような状況が頻繁に起こっている。ティーンエージャーにとって、「生きる」ことはとても曖昧で、「死」は甘美な世界に思えてしまう。そんな綱の上を歩くような若者の精神状態をソフィア・コッポラは、実に儚く、揺れるような映像美で見せる。

隣家の兄弟にとって、5人姉妹は少女の儚さ、美しさを永遠にとどめたまま存在し続ける。彼女たちの存在はまるで夢であったかのようだ。美しい宝石箱を見せられて、パタンと蓋を閉じられたような感覚。エンディングはまさに新作「マリー・アントワネット」と同じ余韻だ。
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by galarina | 2007-01-31 23:13 | 映画(あ行)