「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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愛の流刑地

2007年/日本 監督/鶴橋康夫
<TOHOシネマズ二条にて鑑賞>

「この男はずるい。よって懲役8年」
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<物語について>
「殺して」と訴えるほど女を追い詰めたのは、男。そこんとこ菊治はちゃんとわかっているのか。そこまで愛した女なら、なぜ共に苦悩してやらない。菊治には捨てるものはない。むしろ、本は書けるし、快楽は得られるし、いいことだらけ。それにひきかえ情事の後、女は家庭に戻って、夫に見破られないよう心を砕き、そして子供たちには申し訳なさの気持ちで身がよじれるほど苦悩している。なぜ、それを菊治は想像できない?バーのママに俺は女をイカせられる男、なんてニヤついている場合なんかじゃ絶対ないはずだ。

愛する男を誰にも触らせたくなかった、最後の女になりたかったから、「殺して」と頼んだ。この論理が私には飲み込めない。私が冬香で本当にそう思ったら、殺されるのではなく、男をこの手で殺す。そして、男を自分の中に永遠に封じ込めるだろう。そう、阿部定のように。冬香は文字通り、この男に罰を与えたかったのだ。その無神経さと自分を狂わせてしまったことに対して。そう考えないと合点がいかない。しかし、物語は、どうしても「愛する男を誰にも触らせたくなかった」「快楽の中で死ぬことが彼女の本望だった」と言う理由で押し通す。そこに、私は男が描き出す勝手な妄想しか見出せない。

「快楽の絶頂で交わったまま死ぬ」ということに渡辺淳一氏はえらくご執心だ。「失楽園」もそうであった。しかし、このテーマを扱う時に避けて通れないのが阿部定事件を扱った大島渚監督の「愛のコリーダ」である。以下、非常に個人的な思い入れで申し訳ないのだが、「愛のコリーダ」という作品は私にとって特別なものである。「性」について、これほどストレートにそして真摯に取り組んだ作品はないと思っている。私にとって唯一無二の作品だ。

でも、同じモチーフを扱いながら、渡辺淳一氏はどうしてもそこに「男に調教される女」「昼は淑女で夜は娼婦」という女性像を作り上げる。その身勝手さがやりきれない。

だから、私には「情交中に男に首を絞められて殺される女」を描きたいという欲求がまずあって、そのために極めて男目線でストーリー作りをしていったとしか思えないのだ。第一「ください」という言葉がしらじらしい。それに、そこまで変わってしまった女なら思い切って家を出るだろう。そして、極めつけは録音テープ。あれを女が始めたというのなら納得が行く。持ち帰って彼に会えない時に聞くのだ。しかし、始めたのは男。夫も子供もいる女を愛しているなら、それが万一第三者の手に渡った時のことを想像するべきで、あまりに幼稚だ。

<映画について>
まず、長谷川京子の演技についてはみなさんがご指摘しているので省略。法廷であんな胸の開いた服は着ない。せめてそれだけでも何とかして欲しかった。陣内孝則の演技も含め、法廷シーンをもっとリアルに重厚にしてくれたら、随分変わっただろうに、と思う。

寺島しのぶがあれだけ腹をくくってくれたにも関わらず、ベッドシーンにエロスがない。何かの記事で読んだのだが、鶴橋監督の狙いが、純愛のほうに目を向けているからとあった。しかし、それではおかしくないか。冬香は、いつでも殺して欲しかったんじゃない。まさに情事の最中、快楽の泉の中で死にたかったのだ、という解釈をつらぬきたいのなら、それこそエロスを描かねばならんだろうと思う。

言いたいことがいっぱいあって、豊川悦司のことがあんまり書けないじゃないか(笑)。さて、日本の映画俳優の中で、ベッドシーンを演じられる人が少ない、というのはある意味問題です。女優もそうなんですが。しつこいですけど、「性」は「生」と「死」を表現するもの。役者として避けて通れない道である。その中で豊川悦司はきちんとベッドシーンができる数少ない俳優だと思う。後は誰だろう?佐藤浩一、役所広司、真田広之あたりだろうか。ホントにパイが少ないなあ。

でも、これまでの豊川悦司の出演作品で「愛の流刑地」以上にもっとエロスを感じる作品はある。これだけベッドシーンが話題になったにも関わらず、そうなってしまったのは、やはり演出の問題だろうと思う。むしろ、白い開襟シャツの開いた胸元がとてもセクシーだった。そして、ファンとして目が釘付けだったのは、「裸足にゴム草履」。連行される時も、拘置所内でも、裁判所でも「裸足にゴム草履」。「愛していると言ってくれ」から「裸足にゴム草履」は彼のトレードマーク。ゴム草履にここまでエロスを与えられる人はいないです。その点に関しては、鶴橋監督にありがとうと言いたい。

ああ、長々と書いた割には変な締めになってしまった。
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by galarina | 2007-01-21 00:43 | 映画(あ行)