「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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犬神家の一族

2006年/日本 監督/市川崑
<三番街シネマにて観賞>

「ミカバンドはミカが変わったのに」
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今回のリメイクに関して以前の雑感で、サディスティック・ミカ・バンドの再結成のように喜ぼう、と書いた。「ただ、そこにいるだけでありがたい」、と。でも、よく考えればミカバンドは、ミカが「木村カエラ」になっていたんである。おんなじメンバー、おんなじメロディ。幸広まだドラム叩けるんだ!バンザイ!だけど、それにもまして新ボーカリスト木村カエラのインパクトはでかかった。再結成ミカバンドは新しいボーカリストを得て、オールドファンにもまぶしく映った。

で、何が言いたいかと言うと。

今回の「犬神家の一族」は、みなさんご指摘の通り30年前の作品とほぼ全く同じなのであった。実に細かいところまで同じである。ファンというのは勝手なもので、もう一度やってくれという割には、全く同じだと不満なのである。そう感じた一番大きな原因は石坂金田一がお年を召されたということだろう。市川+石坂版の大ファンゆえに心苦しいのだが、走る姿が痛々しい。また金田一のひょうきんさやマヌケな部分というのは、若い故に魅力的に見える、というのが今回つくづく感じた。

ミカバンドの核がミカであるように、今回のリメイクはいっそのこと新しい金田一を抜擢しても良かったんではないだろうか。カット割りの細かいところまでは見比べてみないと何とも言えないが、全く同じものを30年後に発表することにどんな意味があるのだろう。大好きな市川監督だけに、新しいチャレンジが欲しかった。そして、やっぱりすげえや、と唸らせて欲しかった。これも過剰なファンの期待なんだろうか…

さて、市川+石坂版の金田一シリーズでは、同じ俳優が違う役で何度も出てくる。これはファンならではの楽しみのひとつ。(大奥にもよく見られるこのパターンはここが原点なのかな)リメイクということで、大滝秀治のように(全然変わってないなあ、この人だけは)同じ役の人もいるけど、違う役で出てくる人もいる。私個人としては、盲目のお師匠さんの役の草笛光子がツボでした。草笛光子はほとんどのシリーズに出演していて、毎回全く違う役どころなのが面白い。30年前はこの役をつい先頃亡くなった岸田今日子が演じていたというのも感慨深いものがあります。

映像として気になったのは、明暗のコントラストがいつもより弱いんじゃないのかな、ということ。黒の使い方と言うのかな。それからカット割りも多かったんだけど、カットの切り方が遅い感じがしたなあ。やっぱり市川作品の持ち味は、次のシーンがかぶさるようにぱっぱと切り替わるカットだもんね。(このあたりフジテレビのドラマ版もパクってるよね)しつこいくらいに女優の顔に迫るカメラは健在。冨士純子はクライマックスにかかるに従い、どんどんすさまじい表情になっておりました。この撮影でシワが増えたんじゃないのかと思うほどで。

そして物語として気になったのは、野々宮珠世の出生の秘密がやけにあっさりと金田一の語りで流されていること。佐兵衛翁は野々宮大弐と男色関係にあり、その妻とも関係があった。この特異な関係性によって佐兵衛翁の人格が崩壊していく。ここを観客にしっかり理解させないと、松子を突き動かすだけの佐兵衛翁の怨念が伝わらない。またこういうおぞましい肉欲の世界こそ横溝ワールドの真骨頂とも呼ぶべきポイントであるはずなのに。

全く同じだからこそ、30年前と比べてしまう。もっともっと違う作品に仕上げてくれたら、これはこれ、として感想が書けたかも知れないのにとても残念。それだけ、一連の市川+石坂版の金田一シリーズの完成度が高いということでもあるのだろう。ただ、90歳を超えて、市川監督が金田一シリーズを撮ろうと決意されたのは、今シリーズに対して大いなる愛着を持っているからだろう。その市川監督の気持ちを確認することが、この映画鑑賞の一番大きな目的だったかも知れない。
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by galarina | 2007-01-10 17:44 | 映画(あ行)