「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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天国の口、終りの楽園

2001年/メキシコ 監督/アルフォンソ・キュアロン 

「ルイサが僕たちを大人にしてくれた」
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何の気なしに、見始めた映画が大当たりだった時って、すごく嬉しい。まあ、この情報過多の時代、そういう作品に巡り会うのはとても難しいのだが、今作はその数少ない大当たりの一つだった。そして、この作品で、私は初めてガエル・ガルシア・ベルナルを知り、「なんだこのイイ男は!」と色めき立ったのである。

ドラッグとセックスに明け暮れるふたりの少年フリオとテノッチ。そして、その間にひとりの人妻。3人は「天国の口」と呼ばれる伝説のビーチを探しに旅に出る、というストーリー。本国メキシコでは2001年の興行成績第1位を記録する大ヒットとなった。

これは、ふたりの少年が大人の男へと変わる旅である。そしてあてどない旅が南米(今作はメキシコ)であることから、「モーターサイクル・ダイアリーズ」と非常によく似ている点が多いと言える。事実どちらの作品とも、主演のひとりがガエルであるため、「モーターサイクル・ダイアリーズ」を見ている時、私は今作を思い描かずにはいられなかった。ただ「モーターサイクル・ダイアリーズ」が男たちの心の変遷を静かに描いているのに対して、今作はその大人への脱皮を「性」と「死」をベースに描いているのが、私を惹きつけて止まない大きな点なのだ。

性描写が非常にストレートなため、そこばかりに目が行ってしまう方もいるようだが、少年たちは「生」を感じるため、ルイサは「死」に向かうための、その自己確認の方法がセックスなのであり、むしろ、セックスの表現が奔放であればあるほど、その刹那的な行為の向こうに哀しみを感じる。

そのもの悲しさは、ルイサが隠している秘密によるところもあるのだが、3人が旅をしている時に出会うメキシコの風景によるところも大きい。物乞いをする人たち、銃を持った警官に取り締まられる民間人、道ばたに手向けられた花束…。車の中でセックスの馬鹿話をしている3人の窓の向こうには、そのようなメキシコが抱える社会問題や人権問題を訴える映像が織り込まれている。このさりげなさが映画に深みを与えている。

主人公ふたりの少年の設定も、実は富裕層の息子と母子家庭の息子というコントラストがある。家庭環境に決定的な溝があるふたりは親友だった。しかし、この旅はふたりの関係性も変えてしまった。ということで、この作品は「少年が大人になる旅」を軸に、実に様々なモチーフをバランス良く織り込んでいて、とても完成度が高い。

口から出任せに言った「天国の口」というビーチが本当に存在し、その美しい浜辺で過ごす3人。そして、旅の終盤、3人で交わり、そのあまりに甘美な快楽からキスをするフリオとテノッチ。僕たちは次の日、目を合わせられなかった。誰にも言えない秘密を持ってしまった。そして、僕たちはもう会うこともなかった…。

見終わって、3人の心の痛みがチクチクと残る。その切なさが、とってもいい余韻を残してくれる。フリオを演じるガエルとテノッチを演じるディエゴ・ルナは、実際にも親友同士だそうで、実に息のあった演技を見せる。大好きな作品です。
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by galarina | 2006-11-23 13:48 | 映画(た行)