「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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ガープの世界

1982年/アメリカ 監督/ジョージ・ロイ・ヒル

「いい映画は何度見てもいい!」

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数々の原作が映画化されている作家ジョン・アービング。そのヒットの原点とも言える名作。まず、オープニングからして非常にステキ。ポール・マッカトニーの「When I'm 64」に合わせて空をフワフワ飛ぶ笑顔の赤ん坊。人間が生を受けたことのすばらしさ、喜びをほんわかと軽快に見せてくれる。そう、この映画は全編「生きることはすばらしい!」ことを伝えている。加えて、女性性とは何か、今で言う「ジェンダー問題」にも非常にユニークかつ鋭い視点が満載で、大いに笑い、大いに考えさせられるすばらしい娯楽作品なのだ。(以下ネタバレです)

看護婦ジェニー・フィールズ(グレン・クローズ)は、子供が欲しかったため、病院に送り込まれた動けない傷病兵に、またがって(!)子供を作る。そして、生まれてきたのが主人公ガープ(ロビン・ウィリアムス)だ。ジェニーは実にあっけらかんと言う。私は精子が必要だったの。子供が産みたかったの、と。つまり、ガープの出生そのものが、「婚姻関係」や「父と母の揃った家庭」に対するアンチテーゼなのだ。

しかし、ガープは決して「かわいそうな子供」としては描かれない。だって、そのような出生をしたからって、かわいそうなんて一体誰が決めつけることなの?生を受けた、ただそれだけで人生はすばらしいのだ。ジェニーはガープに「しっかりと自分の人生を生きなさい」と言う。

作家になると言うガープ。じゃあ私も自伝を出すわ、と言って書いた作品が一大ベストセラーに。女性解放運動の気運も高まる時代で、ガープの母ジェニー・フィールズは、一躍時の人となる。実家の邸宅は、女性解放運動の活動家を始め、DVを受けた女性や性同一性障害の人など、さながら女の駆け込み寺になる。

さて、「危険な情事」ですっかり怖い女のレッテルを貼られてしまったグレン・クローズですが、この作品では強く前向きに生きる女をとても素敵に演じている。本当にすがすがしくて好感が持てる。女性解放運動のシンボルになってからは、常にナース姿。これが笑える。今作には、大まじめなんだけど、笑わずにはいられないポイントがたくさんあって、そこがアービングらしさであり、我々がこの作品に深い愛着を感じる大きな所以だ。

その最も象徴的な場面は、妻が愛人と浮気している車にガープの車が追突。妻はアゴを負傷し、妻の愛人はイチモツが食いちぎられる、なんてエピソード。事故の場面の後、ジェニーの家。おもむろに振り返る妻のアゴにはリハビリ用の器具が…。もうね、吹き出してしまいましたよ。何もこんなシチュエーションで事故しなくてもいいのにねえ(笑)。

私は最も気に入ってるのは、ガープと妻がベビーシッターを呼んでふたりで外出するも、車の中から子供たちを眺めるシーン。ガープが一番好きなのは、子供たちを我が家の外から眺めてしみじみと幸福を噛みしめることなのだ。とってもじーん、と来るいいシーンです。

ジェニーは運動のシンボルとなることで、危険な目に遭うし、ガープはガープでジェニーの息子でありながら、女性解放運動を阻むものとしての標的にされてしまう。ふたりの運命は、不穏な様相を見せ始める。しかし、人生は山あり谷あり。いい時もあれば悪い時もある。それも全部ひっくるめて生きることはすばらしいという人間賛歌を徹底して伝え続ける本作品。何があっても、前向きに生きた方が人生楽しいじゃないの。だって、せっかくこの世に生を受けたのだから!と実に晴れ晴れとした気持ちにさせてくれるのだ。

ちょっと生きることがしんどい…なんて時は誰でもあるはず。そんな時にぜひオススメしたい作品。
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by galarina | 2006-11-13 18:04 | 映画(か行)