「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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とべない沈黙

1966年/日本 監督/黒木和雄

・美しい蝶の化身と共に戦後の日本を旅する、黒木和雄監督鮮烈のデビュー作
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寒い地方にいるはずのないナガサキアゲハが札幌で見つかる。見つけた少年は学校の先生に嘘をつくなと咎められ、学者にもその存在を否定される。しかし、確かにその美しい蝶は長崎で生まれたのだった…

長崎で生まれた蝶の卵が時にはカバンにくっついたり、人の肩に乗ったりしながら萩、広島、京都、大阪、香港、横浜そして札幌までを旅する様子を激動の戦後の風景に織り交ぜながら描く。叙情的でとても美しい作品。

抽象的な描き方と言えばそうなんだけど、難しい作品かというと全くそんなことはない。被爆の街長崎の教会、そして原爆ドームなど、反戦を訴える映像はたくさん入っているけれど、決して説教くさい物語ではなく、むしろ日本を南から北へと縦断するナガサキアゲハの不思議な旅物語としての色合いが強い。

その旅の先々でナガサキアゲハは戦後の日本の暗部を目の当たりにする。殺人事件、反戦運動、闇の組織、反政府運動。目撃者となる蝶の化身を加賀まりこが演じる。それはそれは、妖しくて美しい蝶の化身。くりっとした大きな目、愛らしい唇、そして60年代のファッションに身を包み、時に静かな傍観者となり、時に男を狂わせる。ほんと、若い時の加賀まりこは可愛い。小悪魔って言葉がまさにぴったり。今どき小悪魔なんて言い方笑っちゃうけど、この加賀まりこは正真正銘の小悪魔です。
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観念的なんて言われてるけども、私はとてもわかりやすい作品だと思う。何か伝えたいことがあって、それをそのままセリフにしたり物語にしているわけではない。でも、そのメッセージはしっかりと受け取れる。

こういう観念的な描き方で伝えたいことをしっかり伝える、というのは本当に高等な技がないとできないと思う。最近の映画はほとんど「物語ありき」だもの。物語の起承転結に泣いたり笑ったりするのも、もちろん楽しいんだけど、こういう作品をたまに見るとすごくすごーく刺激的。良質のATG作品を見ると、いわゆる「アート系」なんてのが、とてもなまっちろく見えるなあ。


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by galarina | 2006-10-11 22:06 | 映画(た行)