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「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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スカーレットレター

2005年/韓国 監督/ピョン・ヒョク
スカーレットレター_c0076382_23453291.jpg

二転三転する殺人事件の真相と、主人公ギフンを取り巻く女たちが持つ秘め事が複雑に絡まり合う、ラブサスペンス。ある殺人事件をきっかけに担当刑事の愛欲の世界に変化が現れ始める、といった最初の1時間くらいの展開に、なんだかフランス映画みたいだなと感じた。ところがどっこい。後半の30分、血みどろの世界に突入し、とんでもない狂気の世界が繰り広げられる。愛を欲するねばり強さが「韓流」だと言ってしまえば確かにこの作品も韓流なんだろう。しかしこの予想外の展開、なかなか悪くない。

「オペラを熱唱し愛車で疾走する男」「ヌードを撮らせる写真館の女」「猫を飼い瀟洒なマンションに住むジャズシンガーの愛人」そして「チェリストの貞淑な妻」。愛と性を軸に絡まり合う1人の男と3人の女なーんて、まさにヨーロッパ映画的なテイスト。一歩間違うと、どんなに気取ってもアジア人はフランス人にはなれねーよっ!って突っ込みが入るんだけども、なんとかこの作品は耐えてる。写真館の女主人に自分のヌードを現像させる男ってのもね、なかなかいい設定ですよ。

そして、何度も出てくるのが「中絶」というキーワード。女主人は何度も中絶しているという噂があるし、妻は男に黙って中絶した経験がある。そして、原題のモチーフともなっている「不倫」=「姦通」。これらのインモラルな事象が最終的にはあの「トランクの中の悲劇」として結する。最後のトランクのシーンは、本当に壮絶だしショッキング。愛人は男をどこへも逃げぬよう、自分のものにするためトランクを閉めたのかな。

さわやか男のハン・ソッキュが、今作品ではナルシストで我が侭な自己中男を見事に演じている。取り巻く女たちとのラブシーンも鍛え上げた体で堂々とこなしている。愛人役のイ・ウンジェ、ラストの悲壮な結末はやはり彼女の死と重ね合わせずにはいられない。車のトランクの中という極めて閉鎖的な空間で繰り広げられるふたりの演技には、本当に頭がおかしくなってしまいそうなほどの狂気がにじみ出ていた。そこで初めて告白される、男の愛人と妻との隠された関係。状況が状況なだけに、その告白も大きな衝撃を与える。

イ・ウンジェの遺作としてこの作品のレビューを書いたらまた違う内容になるんだけども、私はひとつの映画作品としてレビューを書いた。それだけの作品世界を持っている映画だと感じたからだ。

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by galarina | 2006-09-15 23:59 | 映画(さ行)