「カーサ・ガラリーナ」にお引っ越ししました


by galarina
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さらば、わが愛 覇王別姫

1993年/香港 監督/チェン・カイコー 

「傑作歴史大河ロマン」
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程蝶衣を演ずるレスリー・チャンの演技に息をのみ、京劇の美しさ、中国の激動の歴史に心揺すぶられる3時間。2時間以上の映画には耐えられない体質の私でも、この映画は3時間があっという間。少年時代が約40分ほどあるけど、だいたいこういう一生ものを語る映画は少年時代の描写がつまらんのが常なんだが、この映画は違う。同じ男同士でありながら、小豆が石頭を愛するようになる心の変化に素直に感情移入できる。京劇と言う非常に伝統的な世界で行われる、仲間同士のいじめやとてつもなく厳しい修行の描写にも胸を締め付けられる。

何より、レスリーがすばらしい。彼は京劇の女形の役だが、本当に美しいこと、美しいこと。彼が愛する段小樓(チャン・フォンイー)と共に劇中に演ずる京劇『覇王別姫』(はおうべっき)のストーリーと2人のストーリーが見事にオーバーラップしていく。姫を演ずる蝶衣は小樓を愛している。だから劇中、姫という役を通してその愛を訴え続ける。でも、劇は劇、と割り切り、全く意に介さぬ小樓。しかも、遊女の“菊仙”と突然結婚してしまう。小樓の大馬鹿者。

“菊仙”を演じるのは中国を代表する女優、コン・リー。立場的には憎まれ役だが、彼女の演技がこれまたすばらしい。女のしたたかさ、強さ、そして時にかいま見せる母性。蝶衣も恋敵なんだけど、自分を捨てた母もまた遊女であったため、心から憎みきれない。ふたりの間には、敵同士でありながら、心の底でお互いが足りないものを求め合っている、そんな不思議な関係性が生まれていく。

清朝末から日本統治時代、共産党政権樹立、文化大革命という時代の流れと共に、何が良くて、何が悪いかという価値観がすさまじい勢いで変わっていく。社会主義が台頭し、派手な衣装は民衆の前で燃やされ、さらし者にされた上、お互いを告発、罵り合う壮絶なラストシーンは息をのむ。また、劇中の京劇のきらびやかさも圧巻。レスリー・チャンが化粧をして舞台に上がったその様は、見るものを圧倒する。まるで、色彩の洪水。

03年4月に自ら命を絶ったレスリーと蝶衣の悲劇がダブって仕方がない。そしてこれほどの演技をしているのに、レスリーが主要な映画祭でいずれも主演男優賞をとっていない、というのはどうも解せない。切なくて、切なくて、見終わった後も胸が痛い。でも、本当にいい作品を観たという至高の満足感にひたれる、壮大な大河ロマン。文句なし。

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by galarina | 2006-07-10 09:35 | 映画(さ行)